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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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 それから今後どうするのかも決まらぬ内に再び危機に襲われる事となった。ヴィーナス灯台の引き起こした大地震による津波である。船の上ではどうすることもできず、なすすべなく津波に飲み込まれた。
 それからインドラ大陸東の浜辺に打ち上げられ、マドラの町人にチャンパと誤解され連れ去られ、牢屋に閉じ込められていた。
「そこで偶然ガルシアが来てくれたおかげでオレはこうして助かったと言うことだ」
 シンは長々と話し疲れたのか、ため息をついた。
「そいつは災難じゃったのう…」
 スクレータは言った。
「しかしまあ、あなたも悪運が強いわね。私も人のこと言えないけど」
「でもシンは助かったけどあのピカードって人はまだ捕まってるのよね?疑いをかけられたままでかわいそうね…」
 ジャスミンが言うと、シンは突然頼み込んだ。
「そうなんだ、オレも奴には助けられてるんだ。何とか疑いを晴らしてやりたい。そこで頼みがある。オレ達に疑いがかかる原因になったチャンパの奴らを一緒にぶっ飛ばしに来て欲しい」
 頼む、とシンは頭を下げた。
「当然だろう?シン」
 ガルシアは言った。
「私達が嫌って言うと思う?」
「上等じゃない、チャンパだか何だか知らないけど、私が軽くとっちめてやるわよ」
 ジャスミンは笑顔で言い、シバは右の拳を左手で受け止めてパン、と鳴らした。
「しかし、シン、チャンパがどこにいるのか分かっとるのか?」
 それには及ばないとシンは答えた。チャンパはアラフラにいるらしいとの噂を既に耳にしていた。
「たぶんそこに奴らのアジトかなんかがあるんだろう」
「まあしかし、アラフラへ行くにしても明日にしたほうがいいだろう。今日はもう遅い」
 ガルシアは言った。時刻はいつの間にか十一時を過ぎていた。
「そうだな、久しぶりにちゃんとした布団で寝られるしな。牢屋のベッドは最悪だったな…」
 シンは思い出したように眠気を感じ、大きな欠伸をした。
 ガルシア達は夜を明かし、チャンパを討つべくアラフラを目指す事となった。
    ※※※
「ちきしょう!チャンパの奴ら、どこまでムカつく奴らなんだ!」
 シンの叫びが砂漠中に響き渡った。
 彼らの来ているのはヤンピというオセニア大陸にある砂漠である。ゴンドワナ大陸を中心に起こった異変によってオセニア大陸がインドラ大陸にぶつかったおかげで歩いてオセニアへ渡ることができた。
 それから先が大変な道のりであった。これまではアラフラの町へ直接渡してくれる橋が川に架かっていたらしいのだが、その橋がチャンパによって破壊されていた。
 そのせいでガルシア達はヤンピ砂漠を回り道してアラフラを目指すことになってしまった。
 ヤンピ砂漠はそれほど暑くはなく、砂嵐などの障害もない。この辺はラマカンやスハーラに比べればよっぽど楽である。特にもガルシア達は魔に取り付かれている時のラマカン砂漠を越えている。それに今となっては旅に十分慣れている。労せずヤンピ砂漠を越えることができるであろう。
 しかし、それでもチャンパが橋さえ壊さなければ無駄な苦労を重ねる必要はなかった。シンの怒りが収まらないのも無理はない。
「あ〜、マジでとっつかまえてギッタギタしてやんなきゃ気が済まねえぜ気が!」
 シンは手の指をバキボキ鳴らした。
「落ち着けシン、あくまで俺達の目的はピカードの潔白を証明するためだ。まずは平和的に話し合ってから…」
 ガルシアは宥めた。
「何悠長なこと言ってんのよガルシア。ああいう奴らは痛い目に遭わさなきゃ分からないわよ」
 シバも戦うつもりらしい。この期に及んで言論でなどと言っているのはガルシアのみだった。ジャスミンもスクレータも懲らしめるべきとのことだった。
「何だガルシア、お前もしかしてチャンパの奴らが怖いのか?」
「そういうわけではないが…」
 ただ無益な戦闘は避けるべきではと思うのである。相手は海賊とは言え、魔物ではなくただの人間である。そんな彼らと戦って果たしていいのだろうか、どうしても迷いは晴れなかった。
「ガルシアよ、お主の気持ちも分からんでもないが、奴らのせいで無実の罪を着せられた者もおるしワシらもこうして砂漠を越える羽目になっておる。少し好き勝手しすぎなチャンパの奴らは懲らしめてやる必要があるのじゃ」
 スクレータは諭した。それでもガルシアの気持ちはどうにも晴れない。
「あら、兄さん、あれ何だろう?」
 突然ジャスミンは目の前の砂地を指差した。
「何だ、何かあるってのか?」
 シンは指差す方向を見た。
 ガルシアも見た。目を凝らすと砂地がもこもこと盛り上がってるのが見えた。
 何かが地中を移動しているようだった。しかし、このような砂漠に土竜がいるとは考えにくい、となると別な何かか。
「よおし、あれを引っ張り出すか。オレに任せな!」
 するとシンは枯れた倒木を拾い、砂の上に立てた。
「ジャスミン、オレが合図を出したらこいつを打ち付けてくれ」
「いいけど?」
 ジャスミン含め、シン以外皆意図が掴めなかった。
「おいシン、一体何…」
「静かに」
 言われるままに黙ってみている事にした。
 地中をもこもこと動く何かは砂の中を縦横無尽に動き回っている。なかなかシンが倒木を立てた辺りへは来ない、シンの考えが砂の中の何かに気付かれてしまったのか。それにしてもシンは自信があるといった顔をしている。
 突如方向を変え、何かは倒木へ向かった。すかさずシンは合図を出した。
「今だ、ジャスミン!」
『プレス』
 ジャスミンが詠唱すると倒木の上に重力の塊が発生し、木に降り懸かると一気に深く砂地へ埋め込んだ。
 それとほぼ同時にガツンという音と共に地中を動き回っていた何かが飛び出した。
「奴が逃げるぞ、追うんだ!」
 ガルシア達は追いかけた。しかし、相手はそんなに早く動いていないはずなのに見失ってしまった。
「ちきしょう、どこへ行きやがった?」
 皆で辺りを見回していると魔物は後ろから現れ、何かのエナジーを発動した。
 地面に穴が空き、全員そこへ落ちてしまった。
「うわああああ!」
 空いた穴は数メートル程だが、滞空時間は意外と長く感じた。
 ガルシアが真っ先に尻餅をつくように落下した。鈍い痛みが全身にまで伝わる。痛みで呻いていると、ガルシアの上をシバが踏み台にした。
「よっと!」
「ぐえ!」
「きゃっ!」
 うつ伏せになったガルシアの上にジャスミンが落ちてきた。
「ごめん兄さん!」
 ジャスミンはガルシアの上で慌てて謝った。
 その傍らでシンだけが髪を揺らして綺麗に着地した。
「お〜い、大丈夫かガルシア!?」
 穴の外からスクレータが大声で訊ねた。
「何とか大丈夫だ」
 ジャスミンが降りるとガルシアは立ち上がった。
「ガルシア、気を付けろ。魔物だ」
 穴の暗がりから魔物の目が不気味に光っていた。それはゆっくりとこちらへ向かってくる。穴から差し込む光に照らされていくと魔物の正体が明らかになった。
 体はいかにも固そうな殻に包まれており、手は鋏のようになっている。上に伸びた尾には鉤状の毒針がある。体躯はとても大きい。