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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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 スサは村では暴れん坊として有名だった。幼くして両親を亡くし、それ以来は祖父母や姉によって育てられてきた。
 家族の末っ子としてかなり甘やかされて育ってきた。村長の家系であるために他の村人よりも良い服を着て、良いものを食べ、また欲しい物は大概手に入った。
 そんな彼が気に入らないのか、村の子供達はスサにやたらと突っかかってきた。束になって彼をいじめた。しかし、彼は腕っ節がやたらと強く、そんないじめっ子達は返り討ちにしていた。
 喧嘩に明け暮れている内についにスサには人が寄り付かなくなり、いつしか独りになっていた。乱暴者と後ろ指を指され、スサに近寄ると必ず怪我をするなどという噂を立てられ、遂に誰も彼に近寄らなくなってしまい、関わり合うのは彼に負けないほどの暴れん坊だけとなっていた。
 そんな彼にある運命的な出会いがあった。
 いつものように一人ふてくされながらぶらぶらと歩いていた時のことである。村の広場に子供達の集団が何かを囲んでいた。木の枝を手にして、彼らが囲むものを打っていた、からかいの言葉を含めて。
 スサは近寄って子供達が囲むものを目を凝らして見た。彼らの隙間から見えたのは頭を抱え、うずくまる少女であった。
 木の枝で頭を叩かれ、少女は泣いていた。一方的ないじめであった。
 スサは間髪入れずに集団に駆け寄って怒鳴った。すると集団はスサの姿を見ただけで散り散りに逃げ出していった。
 いじめっ子集団を追い散らし、立ち去ろうとするスサを少女は感謝の言葉と共に彼を引き止めた。
 少女はクシナダと言った。質素な白い着物を身に着け、艶めく黒髪の目がぱっちりした可愛らしい少女だった。
 人見知りの激しいクシナダは周りの子供と打ち解けられず、仲間外れにされていた。そればかりかいじめっ子からの標的とまでされていたのだった。今回のようないじめは一度だけではなかったという。
 それからスサとクシナダは二人でよく遊ぶようになった。お互いに誰かと対等に接し合えるのはお互いが初めての事だった。毎日毎日、来る日も何よりもまずスサはクシナダと一緒だった。一緒にいる度に二人の絆は日に日に深まっていった。
 クシナダもまた親がいなかった。彼女の叔母の手で育てられていたのだった。また、クシナダにもスサやウズメのように不思議な力が宿っていた。スサが転んで怪我をした傷をその力で治し、スサをかなり驚かせた。
 クシナダと初めて出会ってから約五年の月日が経った。スサが十二歳でクシナダが十歳の時だった。
 スサとクシナダは夕暮れ時の原っぱに来ていた。その時スサはある決心をしていた。思いの丈を全て告げようと。
――なあ、クシナダ…――
――なに、スサ?――
――オレ、クシナダのことが…――
 はっとスサは目を覚ました。体を起こし、辺りを見回した。
 夕やけで辺りはすっかり暮れていた。
――寝ちまってたのか…――
 それにしても随分と恥ずかしい夢を見たような気がする、目を覚ました一瞬でほとんど忘れてしまったが。
 それよりも辺りは夕暮れである。もうそろそろ家に帰っても平気な頃合いである、それに祭も間もなく始まる。
「よし、そろそろ帰るか」
 スサはその場を後にした。
    ※※※
 スサは説教を食らっていた。
 こっそりとウズメに見つからないように家に帰ったのだが、玄関口でウズメが待ち構えていた。長い間スサの姉である以上彼の考えは完全にお見通しといった様子だった。
 説教の内容は昼間乱暴をした事から何故かイズモやこの村から南西に位置するフジ山についての話にまで広がった。スサはげんなりとしてそれを聞き流している。
「いいことスサ、どうせ使うならその力、もっと人々の役に立つように使いなさい」
 これでは祭には行けないとウズメの説教を聞き流しながらスサは考えていた。どうにかこの説教を終わらせる手を考えなければ。
「大体、今イズモには…」
 言いかけた所でウズメはしまった、という顔をした。
 ウズメの話が途切れた途端、スサはしめたとばかりに立ち上がって逃げ出した。
「ちょっとスサ、まだ話は…」
 ウズメが言いかけた事は若干気になったが、構いはしない、スサにとって重要なのは祭に行く事である。
「へへ、姉貴、今日の話はもうここまでだ!じゃあな!」
「スサ!」
 スサは家から出て行った。
「スサ、今イズモには危機が迫っているというのに…」
 ウズメは呪術や占術に長けており、それらの力を用いる事によって未来に起こることを予知する事ができた。
 今から半年ほど前、ウズメは呪術による占いをしていた。これからのイズモはどうなるのか、作物の収穫はどれほどになるか、そういったものを知るべく、ウズメは予知の力を使ったのだった。
 呪術が出したイズモの未来は恐ろしいものだった。フジ山にて太古の昔、ミコトにて封印された魔龍オロチがその封印を解き放ち、再びイズモに災いをもたらすというものだった。
――何と言うことでしょう!?
――おい、その話は本当かい?ウズメ様
 ウズメは驚いて顔を上げた。目の前にいたのは軽装で長い黒髪を後ろで留めた、我流で忍術をも体得した村随一の剣士。
――シン!あなたいつの間に!?
――急にお邪魔した事は謝るよ。それよりさっき言ってた事は本当なのか?
 シンは彼の姉から言付けがあって来たのだった。声を掛けても返事がなかったので仕方なく上がった所、偶然ウズメの声を耳にしたのだと言う。
 ウズメは包み隠さず全てを話した。隠した所でもう知られていることなのだ、もうシンには隠せない。
 シンは当然の事驚いた。これがもし村人に知れれば混乱を招く事になりかねない、ウズメはシンに他言しないように釘を刺した。
――何とかオロチが復活してもまた倒す方法はないのか?
 シンは訊ねた。
――遥か昔、ミコトは『あまくもの剣』を使う事によってオロチを瀕死に追いやったと言います。それがあれば或いは…
 あまくもの剣はオロチを瀕死に追い込んだ唯一の武器であった。しかし、ミコトがオロチを封印し、彼の死後数日が経ってから忽然と姿を消してしまった。ウズメ達には分からないが、それは錬金術の封印によるものであった。
 そんな存在もあやふやな剣を探しに行くとシンは言い出した。
――シン!?何を言っているのですか、あまくもの剣はあるかどうかさえ分からないのですよ
――けど、何もしなきゃオロチに村はやられちまうんだぜ?誰かがやらなきゃなんねえだろ
 シンはこう言うが、イズモ村では民が村を出るというのは有り得ない事だった。村を出るにはそれ相応の理由が必要であった。もちろんこれは十分すぎる理由と言える。しかし、この事を村人に言えば、オロチの事も彼らに知られてしまう。
――そうだなあ、それじゃあこうしないか、オレが村を抜け出す。そうすればみんなには知られない
 シンはまたもや恐ろしい事を言い出した。村を抜けると言うのは重罪となる、償いは死である。
 ウズメは驚いてシンを止めた。
――ウズメ様さっき言ってたよな?オロチはこの先復活したら生贄を要求してくるだろうって
 制止の言葉は聞かず、シンは質問した。