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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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「クシナダを助ける、そう告げるとスサは沢山の酒樽を運んでフジ山へ向かいました」
「何でスサってやつは酒樽なんか持ってったんだ?」
 ジェラルドは言った。
「恐らくオロチをすっかり酔いつぶしてから戦うつもりなのでしょう。酔わせただけで果たしてオロチに勝てましょうか…」
 ウズメの顔の陰りは消えそうになかった。
「ご安心ください、ウズメ様」
 ウズメは顔を上げた。
「私は長旅の末、『あまくもの剣』を見つけ出しました」
 ウズメは驚いた。
「あまくもの剣、とはあの伝説の…?」
「その通りです」
 リョウカが目配せすると、ロビンは背負った剣を抜き放った。輝く刃が光を反射する。
「これがあなた方の言うあまくもの剣です。本当は『ガイアの剣』って呼ぶんですけどね」
 ロビンは言った。
「では、それがあればオロチを?」
「ええ、きっと倒せるでしょう」
 リョウカが自信を持って答えた。
「すぐにでもスサの後を追って私達もオロチ討伐へ向かいましょう」
「待つのです、リョウカ」
 リョウカが提案するとすぐにウズメは引き止めた。
「どうしましたウズメ様?すぐにスサを助けに行かなければ…」
「あなたの兄、シンはどうなったのですか」
 シンがどうして掟に背いて村を抜け出したのか、その全てを知っているのはウズメのみであった。
 彼は近い未来にオロチが復活するというウズメの予言を漏れ聞き、同時にウズメによりあまくもの剣の話も聞いている。彼はあまくもの剣を探すために村を出たのだ。
 故に本来ならばシンがあまくもの剣を手に入れ村へ帰ってくるはずであった。それが帰ってきたのはその討滅者であり妹のリョウカの方であった。ウズメはこの事に疑問を抱いたのだった。
 リョウカは言葉に詰まり、俯いた。ウズメも想像していたことだが、リョウカのこの様子からほとんどウズメの想像は合っているように感じた。
「兄様、いや、掟に背いた反逆者、シンは私が討ち取りました」
 リョウカは気を張って自信の使命を果たした旨を告げた。実際にはシンはリョウカの手によってではなく自ら海へ身を投げたのだが。
「そうですか、ではあなたはシンの意志を継ぎ、あまくもの剣を持って帰ってきた。そういうことですね?」
 シンがオロチを復活させるために村を抜け出したと言う話が村中に広まった時、リョウカは自ら進んでその討滅の役を買って出た。その時はシンに対して大きな恨みを持っている様子だった。
 しかし今はそんな様子は全く見られない。昔のようにシンを慕っているようである。彼との戦いの時に和解を果たしたのか、ならば討つ必要はなかったのではないか。
 いくつか疑問が残ったが、ひとまずウズメはリョウカが意志を継いだのだと解釈したのだった。
「意志を継ぐなど、私は村を守るために尽力するまでです」
 やはり無理をしているように見える。しかし、ウズメはそれ以上は言わなかった。
「何にしても、その剣があればオロチは倒せるでしょう。リョウカ、皆さん、どうか討伐に向かってください」
「おう、任せな!オレ達が軽くひねり潰してやるぜ!」
 ジェラルドはニヤッと笑って自身の胸を叩いた。
「ボク達に任せてください」
「期待に応えてみせますわ」
 イワンとメアリィも応じた。
「ウズメ様、必ず僕達がこの剣で村をお救いします」
 ロビンはガイアの剣片手に言った。
「皆気持ちは一つです。すぐにでもフジ山へ向かいましょう」
 行こう、リョウカは皆に呼び掛けた。
「待ちなさい、リョウカ行くのは明日にするのです」
 ウズメは再び引き止めた。しかも、一刻を争うこの事態に明日まで待てと言うのだった。
「どうしてです!早く行かねばスサが…」
「そのスサの為です。スサの作戦にも少し賭けてみるのです」
 多少なりともオロチを酒で酔わせておけば戦いが楽になるだろう、それが一つの理由だった。
 もう一つ理由があった。
「リョウカ、あなた自分の家へは帰ったのですか?」
「それは…」
 村に来てすぐにここへ来たので当然帰ってはいない。
「シンを討ち取ったというならその事をあなたのお姉様にも伝えなければなりません。悲しい知らせとなるでしょうが、あなたが使命を引き受けた以上、最後まで果たさなければなりません」
 リョウカは言葉を失っていた。
「リョウカ…」
 ロビンは心配そうに言った。
「いいですね、必ず帰るのですよ」
 その後ウズメはロビン達に帰るよう頼んだ。ロビン達はそれに従ってウズメの屋敷を後にした。そろそろ日も傾き始めた頃だった。
 道を行く途中リョウカは無言で皆もそれにつられ沈黙に包まれていた。
 そんな沈黙を破ったのはロビンだった。
「なあ、リョウカ」
 リョウカは何も言わずロビンに目を向ける。
「やっぱりウズメ様の言うとおり帰った方がいいんじゃないか?」
 沈黙が流れる。
「確かに言い出しづらいと思うけどさ、シンの事はちゃんと言った方がいいと思うんだ」
「………」
 ロビンは苦笑した。
「ああもう!焦れったいなあ!今更くよくよしてたってしょうがねえだろう。自分が引き受けた事なんだろ?だったら最後までやんなきゃだめだろ!」
 ジェラルドはしびれを切らして言った。
「ちょっとジェラルド、そんな言い方は可哀想ですよ」
 イワンは注意した。だってよ〜、とジェラルドは口を尖らせた。
 すると、リョウカはフッと小さく笑った。
「そうだな、ジェラルドの言うとおりだ」
 軽く開き直っているようにも見えた。
「リョウカ?」
「自分で蒔いた種は自分で刈らないとな」
 こっちだ、とリョウカは先頭に立った。
「リョウカ、一体どこに行くんだ?」
 ロビンは訊ねた。
「決まってるだろう?私の家だ」
 それはつまり姉に知らせるという事に他ならなかった。
「いいのか、リョウカ?」
「当然だろロビン、思えば私がやると決めた事だ。誰も責められはしない」
「でも…」
 さっきまで帰るよう説得していたロビンであるが、今のリョウカが無理をしているように思えて今度は思いとどまらせるような事をしている。
「まあまあ、いいじゃねえかロビン、本人がこう言ってんだからよ!お前がごちゃごちゃ言ってるとまたリョウカの気が変わっちまうぞ」
 ジェラルドはロビンの肩に手を回し、言った。
「う〜ん…」
 ロビンは釈然としなかった。
「おい、ロビン、ジェラルド、もう済んだか?早く行くぞ!」
 リョウカ達はもう歩きだしていた。
「おおい、待ってくれよ!」
 ジェラルドもロビンを引き、駆け出した。
「そういえば、リョウカにはお姉さんがいるんですよね、どんな人なんですか?」
 歩いている途中でイワンが訊ねた。
「とても綺麗な人さ。そしてとても強い」
 身体も心も強い人だと、リョウカは誇らしく話した。
 リョウカが物心つく前に亡くなった両親の代わりに年端のいかない少女であった姉が赤子同然のリョウカと幼いシンを育ててくれた。
 両親が亡くなって、一番辛いのは姉のはずだった。それなのにシンとリョウカのいる前では決して涙を見せることはなかった。もちろん弱みを見せる事もなかった。
 リョウカにとっては一番の憧れの人物である。