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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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 イワン達が手伝ってくれたおかげで洗い物はすぐに終わった。
「そうだ、もう一つ訊きたいんだけど」
 洗い終わった食器を籠に詰めながらヒナは訊ねた。
「何でしょう?」
「ロビンの事なんだけど…」
 ロビンが一体どうしたというのか、突然で、しかも漠然としており、イワン達はヒナが何を知りたいのか皆目見当も付かなかった。
「ロビンがなにか悪いことでもなさいましたか?」
 メアリィは訊ねた。
「ううん、そう言う事じゃないの。ただロビンには普通じゃない力があるような気がしたの、心当たりない?」
 イワン達は振り返ってみた。特にこれといった事はないように思える。しかし、ふと二人は思い出した。
「そういえば…」
「やっぱり何かあるの?」
「ええ、あれは大陸で行われた大会の事でした…」
 イワンはアンガラ大陸で行われたコロッセオの話をした。ロビンとリョウカがその大会に参加し、二人は決勝まで勝ち進み、戦い合った。
 試合も終盤に差し掛かろうというところでリョウカはとどめを刺すべくロビンに大技を決めた。これにより勝敗は決したように思われた。
 しかし、試合は終わらなかった。突如ロビンの体が妖しく輝いたかと思うとまるで別人のように変貌を遂げた。
 変わったのは雰囲気だけではなかった。力も段違いになっていた。終始ロビンを圧倒していたリョウカが今度はロビンに圧倒される事となった。
 あの時のロビンは試合に勝とうとする者の目ではなかった。相手を殺そうという恐ろしい目であった。
「あの時のロビン、とても恐かったです…」
「リョウカが、負けたの?」
 ヒナは信じられなかった。今までにリョウカを負かした事のある人物はヒナとシンしかいなかった。ロビンがリョウカを負かした事にも驚いたが、それ以上に彼がリョウカを殺そうとした事に驚いた。今日初めて会って、そんなことができる人物にはとても見えなかった。
「どうやらロビンにはとてつもない何かが宿っているみたいね…」
 ヒナは眉をひそめた。
「あの、ヒナさん…」
 ん、とヒナはイワンに目を向けた。
 どうして唐突にこのような事を訊ねたのか、イワンは言った。
「あたしは人が持つ力を感じ取る事ができるの…」
 幼い頃よりヒナは自らを鍛え上げてきた。父親から剣術を習い、それ以外にも武術の鍛錬に明け暮れてきた。
 村の者と何度となく立ち合ってきた。そのうちに相手がどれほどの力の持ち主であるか、分かるようになったのだった。
 百戦錬磨の勘、といったものに近いかもしれないとヒナは言うのだった。
「あくまで勘よ、あまり気にしないでね。さ、洗い物も終わったし、そろそろ家に入りましょう。ありがとね、手伝ってくれて」
 ヒナは笑顔で礼を言った。
「いえいえ、あっ、それボクが運びますよ」
 イワンは食器を詰めた籠を持った。
「あら、悪いわね。最後まで…」
 三人は家に戻っていった。
    ※※※
 広めの部屋に布団が四つ敷いてある。その中で戦士達は安らかな寝息を立てていた。
 窓から射す月明かりが布団を乱し、大鼾をかくジェラルドを、すやすやと静かに眠るイワンを、横を向いて眠るメアリィを照らしていた。月にはほとんど欠けが見えない、明日の晩が満月となるであろう。ついにオロチが生贄をもらい受ける日が来ようとしている。
 四つある布団の中で、一つだけ全く乱れていないきれいな状態のものがあった。誰も寝ていないのである。
 そこにはロビンが寝るはずだった。しかし、ロビンはいない。
 彼は庭にいた。
 ロビンは一人煌々とした月明かりの下で剣を振っていた。剣を振る度に額からは汗が飛んでいた。かなりの長時間この素振りを続けていたのだった。
――まだだ…こんなんじゃダメだ…――
 明日にオロチとの戦いを控え、緊張感からこうして動かずにはいられなくなったのだった。ロビンの素振りはさらに早くなる。
『スパイアクレイ!』
 エナジーを発動し、自分の目の前に土槍の雨を降らせた。それらが地面に落ちる前にロビンは土の槍を剣で砕く。
「てい、やあ!」
 ロビンは土の槍を砕いた。全て地面に落ちる前に確実に砕いていった。
 ロビンは一人で剣の練習をする時、いつもこのようなやり方で自らを鍛えていた。これをやっていると心の中のごちゃごちゃしたものを忘れられ、夢中になることができた。
 コロッセオの時もそうだった。
 これから待ち受ける仲間との戦いを前にしてロビンは緊張から解き放たれようとこうして自らのエナジーを砕いていた。今もまた魔龍という強大な敵との戦いを前にロビンは緊張感を抱いていた。
「やああ!」
 横一列に降りかかった土の槍を、ロビンは剣を横に振り全て打ち砕いた。
 粉々に砕け散った土が地面へとパラパラと落ちていく。
「はあ…はあ…」
 ロビンは少し息が上がっていた。それほどまでに夢中になっていたのだった。
「ふふふ…」
 ロビンの後ろから微笑む声がした。
「こんな夜中まで、ずいぶんと精が出るわね…」
「ヒナさん!」
 振り返るとそこにはヒナが笑みを浮かべて立っていた。真夜中であるが寝巻き姿ではなく、どうやら寝ていた所をロビンが起こしてしまったというわけではないようだった。
 腰には何故か刀が挿してある。リョウカの持つものと形はよく似ており、違うところといえばその肌色の鞘である。
「明日はオロチを倒しに行くんでしょ、休まなくていいの?」
 ヒナは訊ねた。
「ええまあ、そうなんですけど、だからこそと言うか…。オロチがどんな強い奴なのか考えると、何だかじっとしていられなくて…」
 ロビンは苦笑しつつ答えた。
 ヒナは笑った。
「ふふ、あの子と同じね…」
「あの子?」
「リョウカよ、あの子もあなたと同じような事言って、眠れない眠れない言ってたのよ。まあ、やっとさっき寝付いたんだけどね」
 しょうがない子よね、ヒナは笑っていた。それからすぐにヒナは真顔になった。
「リョウカと言えば、ロビン。あなたリョウカに勝ったんですってね」
 えっ、とロビンは驚いた。その話はコロッセオでの事である。どうして話していないのに知っているのか。
「イワンから聞いたのよ。すごいじゃない、大陸一なんてね」
 ロビンが不思議そうな顔をしているので、ヒナは言った。さらに続ける。
「リョウカに剣を教えたのはあたしなの。あたしが教えたリョウカを倒したんだから、かなりの力を持っているって事よね…?」
「え?」
 ロビンが驚いていると、ヒナは徐に腰に挿した刀を鞘ごと抜いた。
「ロビン、あなたの力、とても興味深いわ。是非ともあたしと一つお手合わせ願えないかしら?」
 言いつつヒナはリョウカのような独特な剣の構えをした。鞘ごと持った刀を腰元に付け、もう片方の手を刀の柄に添えるというものである。リョウカのものとほとんど違いがない、あると言えばヒナは左で構えているところくらいであった。
 突然の対戦の要求に、ロビンはすっかり当惑してしまっていた。
「待ってくださいよ、どうして僕がヒナさんと…!?」
 突如ロビンの周囲に風が舞った。はっ、と気がつくとロビンの目の前にはヒナの顔があった。ほとんど接吻を交わせるほどの距離である。