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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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 腹部には半分抜き放たれた刀の刃が突きつけられていた。ヒナの向ける視線は恐ろしく鋭いものだった。容赦など一切していなかった。
「…今のであなた、死んでいたわよ」
 今までとは打って変わった低いトーンの声でヒナは言い放った。
「お互い剣を持った時点で勝負は始まっているの…」
「ヒナ…さん」
「本気になりなさい、ロビン。ここから先は…、死合いよ」
 ヒナは刀を納め飛び退いた。
「次は本気であなたを斬るわ。どの道あたしに勝てないようじゃ、オロチは倒せないわ」
「く…」
 やるしかないのか、ロビンは歯噛みをし、ガイアの剣を構えた。
「やる気になったようね、行くわよ、ロビン…」
 ヒナは素早い動きで一気に攻めかかってきた。まっすぐに寸分の狂いなく相手に駆け寄る、この攻め口はこれまでにも見たことがある。
――これは…!?――
 ヒナの姿が残像を残し、ロビンの背後へ回る。
「転影刃」
 ヒナはロビンの背中を一閃すべく、刀を抜き放とうとしていた。
『スパイアクレイ!』
 ロビンは自らの背後に土の槍を降らせた。
「!?」
 ヒナはすぐに飛び退いた。土の槍が地面に落ち、砕けて土煙を上げた。
 土煙が止む頃、ロビンは後ろを振り返っていた。
「転影刃ならオレには効きませんよ」
「そうみたいね…」
 転影刃を防がれたが、ヒナには特に驚いた様子はなかった。むしろこのくらいは想定していたようだった。
「なら、これはどうかしら?」
 ヒナは再びロビンに攻めかかった。先ほどと同様に真っ直ぐ狂いなくロビンに駆け寄る。
――また、来るか!?――
 ヒナの残像がロビンの背後へ回った。
『スパイアクレイ!』
 ロビンは背後へエナジーを飛ばした。
「何してるの?」
「な!?」
 背後へ回ったと思われたヒナがロビンの目の前にいた。そのままヒナは剣を抜き、ロビンは対応しきれず肩を掠められた。
 軽く出血する肩を抑え、ロビンはヒナに目を向けた。
――今のは、一体…!?――
 ヒナが仕掛けたのは転影刃のはずだった。確かに彼女の姿は残像を残し、ロビンの背後へと回ったように思えた。
 しかし、実際には目の前にいた。一体何が起こったというのか。
「気の錯乱よ」
 ヒナは言った。
「まあ、簡単に言えばフェイント、とでも言えるかしら」
 寸前まで相手に攻めかかり、その一瞬の隙をつき背後に回るのがヒナやリョウカの使う転影刃である。それとは逆に一度相手に転影刃を見せ、次の一撃も背後に回るかのような攻めを終始見せる事により相手に錯覚を与える。転影刃で相手を仕損じた時に用いる技であった。
――フェイントだって…――
 真っ正面から攻め入られるのか、はたまた背後に回られるのか、これらを読まねばロビンにはヒナの攻撃を防ぐ手立てがない。ヒナの神速とも言える動きの前ではそのような事はほぼ不可能だった。
「どうしたの、ただ立ってないでかかってきたらどうなの?」
 ヒナは軽く挑発してきた。
 ロビンには攻める事もできなかった。迂闊に攻めれば本来の返し技としての転影刃を受ける危険もあったのだ。
「来ないんならまたこっちから行くわよ!」
 ヒナは構え、駆け寄って来た。神速の動きでロビンとの距離は一気に縮められていく。ついにヒナはロビンの間合いに入り込んだ。
「く、どうだ!」
 ロビンは剣を振るった。しかし、剣は虚空を切り裂くのみだった。
 ヒナの姿が残像を残し背後へ回る。
「残念だったわね…」
 ヒナは剣を抜き放ち、ロビンの背を斬り上げた。
「ぐあ!」
 ロビンはとっさに体を倒し、直撃を避けた。それでも傷は決して浅くない。背中に鋭い痛みが走る。
 ヒナは尚も攻めてくる。
『スパイアクレイ!』
 ロビンは後ろにエナジーを発動し、ヒナを牽制した。
『キュアライト…』
 ヒナとの距離が開いた隙にこれまでに受けた傷を治癒した。
 傷の痛みが引くとロビンは再び構えた。
「ふうん、癒やしの力も持ってるのね」
 ヒナは余裕を見せていた。
「なら、ますます手加減はいらないわね?」
 ヒナは再び駆け出した。一気にロビンとの間合いを詰め、転影刃もしくは気の錯乱をしようとする。どちらが来るか、読まねばロビンには防ぐ手立てがない。
――!?もしかして、あれを使えば…?――
 とっさに何かを思い付き、ロビンはガイアの剣を地に刺し、しゃがみ込み地面に両手を付いた。
「どうしたの、降参でもする気?」
 ヒナは間合いに入り込んだ。
――上手く行くか!?――
 ロビンは詠唱した。
『スパイアクレイ!』
 ロビンの周りの地面が盛り上がり、土の槍が溶岩が噴き上がるが如く、空中へ飛び出した。
「何!?あ!」
 思いがけない攻撃に、ヒナは対応できず土の槍に腕を切られた。腕の傷は浅いが、もう少し退くのが遅かったら体を貫かれていたかもしれない。
 空中に上がった土の槍がロビンの周りに落ちていった。落ちた土の槍は砕け散り、土煙となった。
 土煙の中でロビンは立ち上がり、地に突き刺さったガイアの剣を抜き、視線を真っ直ぐヒナへと向けた。
「驚いたわね…あのエナジーをあんな風に使うなんてね…」
 本来前方に土の槍を雨の如く降らせるエナジーを地面から繰り出す事により全方位への攻撃を可能にした。これにより前後左右どこを攻められようとも迎え撃つことができる。ヒナの転影刃も気の錯乱も封じる事となった。
「これでオレにはフェイントも効きませんよ」
「あら、あたしの技はこれだけだと甘く見てもらっちゃ困るわよ」
 ヒナはほくそ笑むと再び間合いを詰めてきた。
――また来るか!?――
 ロビンは迎え撃つべく、また『スパイアクレイ』を発動しようと剣を地面に突き刺そうとした、その時。
「流転…」
 ヒナがロビンの横をすれ違った。それと同時に剣を抜きロビンの脇腹を斬りつけた。
「ぐう!」
 ロビンは斬られた脇腹を抑えた。傷は全然深くない、これが致命傷となるようには思えない。まるでこれはただ相手の動きを止めようというような、そんな攻撃である。
 案の定次に必殺の一撃があった。ロビンは背後に物凄い殺気を感じた。
「…転影刃!」
 ヒナは剣を振り上げ、ロビンの背を斬りつけた。
「うあああ!」
 ロビンは背中から血を噴き上げた。そのまま前に倒れ込みそうになるも、剣を杖にして身を支えた。
 背後から冷たい刃が首へ付けられた。
「この程度?こんなんでオロチと戦おうなんて、笑わせてくれるわ」
 ロビンはエナジーの波動を放った。ヒナは飛び退いた。
 ロビンは息を絶やしながら剣で身を支えヒナに振り向いた。
「はあ…はあ…」
 ロビン震える手で自分の胸元に手を向けた。
『キュ…アラ…』
「させないわ…」
 ロビンの回復が始まらないうちに、ヒナは攻めかかった。これまでのように一気に間合いを詰め、剣を抜きはなった。
 ロビンはその一撃を防いだ。これまでと違い、なんの騙しもない、真っ直ぐな一撃である。
 攻撃はこれで終わらなかった。振り上げられた切っ先が燕の如く返り一気に振り下ろされた。
 ヒナはすれ違いざまにがら空きとなったロビンの胴体を斬りつけた。
「飛燕刃…」
 ロビンの後方でヒナは刀を鞘に納めた。柄と鞘がぶつかる音と同時にロビンは口から血を出し、地に膝を付いた。