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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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 ヒナは歯噛みをし、後ろへ下がった。ロビンはゆっくりと歩みを進め、ヒナはロビンが歩み寄るごとに後ろへ下がる。じりじりと距離を詰められていく。
 突然ヒナは両手をロビンへ向け、詠唱した。
『アースクエイク!』
 エナジーで地面が揺れ、砕けた土がロビンへと飛びかかった。
「ふん!」
 ロビンは手をかざすとエナジーの波動を発し、ヒナのエナジーを止め、さらに跳ね返した。
「っ!?」
 土がヒナへと襲いかかり、ヒナは腕を前にやって防いだ。
 腕をどけ、目を開くとすぐ目の前にロビンがいた。
「うっ!」
 ロビンはヒナの首を締め、そのまま前に押し倒した。ヒナの体へ馬乗りになり、首を締め付けた。
 ヒナはロビンの手を掴み、何とか逃れようとした。しかし、ロビンの手は非常に固く、びくともしない。
 突如ロビンはヒナの両手を掴み、ヒナの頭の上に押し付けた。そして剣の切っ先を地に付け、ヒナの首筋へと刃を突き付けた。
「く、くくく…」
 何とか抜け出そうともがくヒナはどんな獣のうなり声よりも恐ろしい音を耳にした。
 それはロビンが小さく笑う声であった。笑い声はさらに大きく、恐ろしいものに変わっていく。
「ふふふ…、ふはぁははは!」
 突き付けた刃はそのままにロビンは空を仰ぎ、狂ったような笑い声を上げた。一頻り笑い声をあげるとロビンはヒナへとその顔を向けた。
 月明かりによって影を増したその顔はこの世の者とは思えないほどおぞましい。最早ただの人殺しでは形容しきれない。悪魔でさえも恐れおののく、見る者全てを恐怖へ陥れる目がそこにはあった。
 ヒナは必死にもがいた。しかし、ロビンの手は岩のように固く、とても抜け出せそうになかった。腹の上に乗られており、体をひねることもままならない。最早ヒナには死しか待ち受けてはいなかった。
 ロビンは剣を振り上げた。ヒナの首を斬ろうというつもりだった。
「ふははははは!」
 ロビンは高笑いしながらヒナの首筋目掛けて剣を振り下ろした。
 ヒナは全てを覚悟し、固く目を閉じた。
――終わりね…!――
 ロビンの笑い声が響く中、暗闇で血が舞った。
     ※※※
 光一つ射さない真っ暗闇の中にロビンは佇んでいた。
 周りに何があるのか、全く見えない。手探りしても周りには何もない。暗闇ではあるが、自分の手だけは何故か鮮明に見えた。
――ここは、一体…?――
 ここはどこなのか、自分はこれまで何をしていたのか、そして、どうして自分はこんな所にいるのか。考えてみるも、全く思い浮かばない。
 ふと、ロビンは思い出した。ここは確か、前にも一度来たことがある。そう、確かリョウカとの戦いの後二日間も眠っていた時に夢の中でここに訪れている。
 となるとここには奴がいる。自分こそが本当のロビンだと言っていた影の人物が。
 奴はこんな事を言っていた。お前の命が危うくなるような時再び現れる、と。そして、その時ロビンの体を完全に乗っ取るつもりでもあった。
「おい、ロビン!どこにいるんだ!?」
 ロビンは自分自身を呼んだ。しかし、呼んでも呼んでも奴がいる気配がしない。
――まさか!?――
 ロビンは悟った。奴はもう自分の体を乗っ取り、今ロビンとして世界に存在しているのだ。そして、不要となったロビンは奴に代わってここに送り込まれたのだ。
 奴がロビンとなってするであろう事は一つ、ただひらすら目の前にいる者を殺し続ける。奴の近くにいる人物は。
――ヒナさん!――
 ロビンは大声で叫びだした。
「おい、ロビン!止めろ、止めるんだ、ロビン!」
 ロビンは何度も叫び続けた。しかし、とても声を届ける事などできはしなかった。
「元に戻れ!ロビン!」
 声も枯れんばかりに叫び続けていると、真っ暗だった周囲が突然光り出した。光の奥には何やら景色が広がっていく。
 そこにはヒナの姿があった。武器を持っておらず、こちらを睨んでいる。
――まさか、これは奴が見ているのか?――
 ヒナはエナジーを発動した。こちらに向かって土の塊が飛んでくる。
 ふと、視界の中に手が入り込んだ。それは紛れもなくロビン自身のものだった。
――やはり奴が外に!――
 ロビンの手がエナジーを発動し、ヒナのエナジーを相殺すると、ヒナが押し倒された。そして刃がヒナの首へと当てられる。
「止めろ、止めるんだ」
 剣は振り上げられた。
「やめろぉぉ!」
 風景が血で染まった。
     ※※※
「………」
 ヒナは静かに目を閉じていた。
 自分はもう死んだのだ。ロビンに首を斬られ、最早この世の者ではないはずだった。
 そろそろあの世に着いたか、ヒナがそう思いかけた時だった。
 ヒナの首に生暖かい何かが落ちた。死ぬときにはこんな事が起きるのか、ヒナは気に止めなかった。
「ぐ、うう…」
 何かが呻くような声がした。
 ヒナははっと目を開いた。両手はもう自由になっており、動かすことができる。
 首に手をやり確認する。
 繋がっている。これまでのように体と繋がっており、少々早いが脈拍もある。
 斬られていない。ではこの生暖かいものは何なのか。答えはすぐ出ることとなった。
「ぐうう…」
「ロビン!」
 ロビンは自分の左腕に剣を突き刺していた。ロビンの腕を伝ってヒナの首へ血が流れていた。
「ま…た…邪魔をするか…」
 ロビンは呻いた。そして痛みに身を崩した。
「ロビン!」
「ぐ…、大丈夫ですか、ヒナさん…」
 ロビンは顔を歪めて訊ねた。傷はかなり深いようだった。
「ロビン、正気を取り戻したようね…」
 ヒナは起き上がり、ロビンの傷を負った腕を握った。
「ぐう!」
 ロビンは痛みは強さを増した。
「ごめんね…すぐ終わるから…」
 ヒナは目を閉じ念じ始めた。
『キュアベスト』
 ロビンの腕を掴むヒナの手から優しい光が溢れ出し、ロビンの傷を癒していった。
「どう?ロビン、楽になった?」
 ロビンの顔の歪みが次第に和らいでいった。傷口に目をやると何事もなかったかのように傷は癒えていた。
「ありがとう、ございます、ヒナさん」
 ロビンは微笑を浮かべ、礼を言った。
 ロビンの目はさっきまでの血のような赤色ではなくなり、これまでのように澄んだ青色をしている。
「あの、ヒナさん…」
 ロビンは訊ねた。自分の中に宿った何かが、ヒナを傷付けはしなかったか心配になったのだ。
「どうやら、アレの存在は分かってるみたいね…」
 ヒナも自分自身にエナジーをかけ、ロビンとの戦いの傷を癒やした。
 ロビンの思った通り、ヒナは傷を負っていた。自分が負わせた傷である。しかし、全くその時の記憶はないのだ。あるのはヒナの首を斬ろうとしたあの一瞬の記憶だけである。
「オレは何かに、取り付かれているんでしょうか…」
「いえ、あれは紛れもなくロビン、あなた自身の力よ」
 えっ、ロビンは驚いた。
「それもとてつもない力、リョウカだって超える力よ」
 でも、ヒナは続ける。
「リョウカにはまだまだ秘められた何かがある…」
 ロビンには知る由もなかった。
「ちょっと、お話していいかしら?」
「ええ…」
「リョウカの事なんだけど、あの子…」
 一瞬沈黙が流れた。しばしの間が空き、ヒナの鋭い視線がロビンへと向けられていた。