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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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「ふん、我を倒そうというか…。面白い、自ら酒の肴になるのも一興だ」
 オロチは笑うと立ち上がった。
「ほざけ!行くぞみんな!」
「おう!」
 リョウカ、ロビン、ジェラルドはオロチに攻めかかった。
 リョウカとジェラルドはオロチを斬りつけた。しかし、オロチの体にはわずかな傷しか与えられない。
「く、やはり斬れない…、ロビン!」
「任せろ!」
 ロビンは思い切り力を込め、オロチに剣を振るった。前の二人と違い、ロビンの剣はいとも簡単にオロチの体を切り裂いた。どす黒い血が舞う。
「ぬう!」
 オロチは顔を歪めた。
「貴様のその剣…」
 数千年前に自身を封印にいたらしめた剣に違いない、オロチは確信した。しかし、オロチは慌てない。それどころか、余裕の笑みすら浮かべている。
「ふふふ…」
「何が可笑しい!」
 リョウカは叫んだ。
「その剣、我を封印に追い込んだあの人間が使っていたものだな…」
「そうだ、貴様を討ち滅ぼす剣、『あまくもの剣』だ!」
「っ、あまくもの剣だって!?」
 スサは驚いた。最早伝説でしかその存在を認められていない剣が、本当に存在していようとは思わなかったのだ。
「ロビン、一気に決めろ!」
「おう!」
 ロビンはガイアの剣に力を込めた。剣が力に呼応すると光を放つ。
 光が最大になった時、ロビンは剣に秘められた力を解き放った。
「タイタニック!」
 剣の軌跡からガイアの剣の何十倍もの大きさを誇る、巨大な剣状のエネルギー体が出現した。
 巨大な剣はオロチを貫き、大地のエネルギーを撒き散らしながら爆発を起こした。
「どうだオロチ、これをくらって平気でいられるか!?」
 リョウカは勝利を確信していた。次第に爆風によって発生した土煙の中からオロチの姿が明らかとなった。
 そこには大量の血を流し、満身創痍のオロチがいた。息も絶え絶えで最早死にかけであった。
「タイタニックを食らってまだ生きてるなんて、なんて奴だ…」
 ロビンは眉をひそめた。
「ふん…、この程度か…?」
 満身創痍のオロチが言った。致命傷ともいえる傷を受けたというのに、顔には笑みがある。
「死にかけて狂ったかオロチ!この一撃で地獄に送ってやる!」
 リョウカは構え、刀に力を込めた。力が蓄積されていくごとに刀が光を放ち、全体が赤い輝きを帯びていく。
「炎龍…!?」
 『炎龍刃』を放つべく刀を抜き放とうとした瞬間、リョウカは驚いて手を止めた。
「そんな、バカな…!?」
 オロチの傷が物凄い速さで塞がっていくのだ。致命傷を与え、最早オロチに待つものは死のみであるように思えたというのに、オロチに死を与える傷はその意に反してみるみるうちに回復を遂げていくのだった。
「残念だったな」
 傷が完全に塞がり、ニヤリとしてオロチは言った。
 長い年月フジ山に封印されていた事により、更にフジ山の溢れ出る生命力を受け、オロチはより強い生命力をてにいれてしまったのだった。
「今度はこっちの番だ…!」
 オロチは口を開き、炎を吐き出した。リョウカ達は三方に散らばってかわした。
『クエイクスフィア!』
 続けざまにエナジーを発動し、地面の振動と同時に砕いた土をリョウカ達へと飛ばした。
「二人とも、オレの後ろに!」
 ロビンは叫んだ。リョウカとジェラルドは言われたとおりロビンの後ろに立った。
『マザーガイア!』
 迫り来る土の塊を、ロビンは大地のエネルギーを噴き上げ相殺した。
 オロチはニヤリとすると、突如飛び上がった。自らの全体重をかけ、ロビン達の上に落下した。
 『グラビトン・プレス』、このような名に相応しい強力な一撃であった。オロチの落下の衝撃が、広範囲に広がっていく。
「きゃあっ!」
 衝撃に耐えきれず、メアリィは吹き飛ばされ、壁に激突した。
「メアリィ!」
「よそ見をするな!」
 オロチは爪を突き立て、ロビンに飛びかかってきた。素早い一撃でロビンはかわしきれず肩を切りさかれた。
「ぐうっ!」
 ロビンは血の流れる肩を押さえ、膝を落とした。
 オロチの爪は次にジェラルドとリョウカを襲った。その巨体からは想像がつかないほどオロチは素早く、リョウカは辛うじて爪を避けたが、ジェラルドはまともに受けてしまった。
「うお!」
「ジェラルド!」
 急所は避けたが、それでも傷は決して浅くはない。これ以上の戦闘は不可能であった。
「リョウカ、ここは一旦退きましょう!」
 イワンは言った。
「逃げるだと、ふざけるな!そんな真似できるか!」
「いや、ここは退いた方がいい…」
 ロビンは傷の痛みに顔を歪め言った。
「タイタニックが通用しないんじゃ、奴は絶対に倒せない…」
 それ以前に、タイタニックを放つロビン自身が重傷を負っていた。これではどう考えてもこちらに勝機はなかった。
「く、仕方ない…、ここは一旦…」
 リョウカはオロチに背を向け、メアリィに肩を貸してその場を逃れた。ロビンとイワンは傷の深いジェラルドを担いで退いた。
――リョウカ、まだ酔いつぶれてないオロチと戦うなんて無茶な事を…――
 オロチは邪魔者を追い払い、再び杯の前に座った。
「どうした、酒を注ぐ手が止まっておるぞ」
 オロチが言うと、スサは再び酒を注ぐ作業に戻った。オロチを酔いつぶし、隙を突くために。
     ※※※
 ロビン達はフジ山の洞窟から外に出て、それぞれ傷の手当てをしていた。
 メアリィは壁に強かにぶつけられたが、目に見える傷は無く、ロビンとジェラルドのオロチによる傷はメアリィの『プライウェル』で完全に塞がった。
「くそっ!」
 岩場に寄りかかるようにして座っているリョウカは苛立ちを見せ、抱き寄せた刀を強く握り締めた。
 ロビンの持つガイアの剣がオロチに通用しないとあっては、もうリョウカ達に勝機は完全になくなったようなものだった。伝説の剣をもってしても倒れないほどに、オロチはとてつもない生命力をガイアロックから受けていたのだった。
「落ち着けよ」
 ロビンはリョウカをなだめようとした。
「落ち着いてなどいられるか!」
 リョウカは声を荒げる。
「伝説のあまくもの剣で奴を斬ったというのに、奴は死ぬことはなかった。そう、もう私達には…」
 オロチを倒す術はない、リョウカは消え入りそうな声で言った。
 その場にいる誰もが諦めかけていた。例えスサの策が成功したとしても、酔いつぶしただけでオロチのあの強靭な身体が弱くなるとは到底思えない。
 全ては終わってしまう。クシナダを生け贄として喰らった後、オロチはきっとイズモ村を滅ぼすであろう。ひいては、ジパン島そのものを滅ぼす事にもなるであろう。
――私達には、もう…どうすることも…――
「やっぱり、苦戦してるみたいね…」
 ふと、女性にしてはトーンの低い声がした。リョウカははっと、顔を上げ、そこを見た。ロビン達も同じく視線を向ける。
「ヒナさん…!」
 そこにはヒナが立っていた。昨日までとは衣装が異なり、白い小袖に朱色の美しい緋袴を身に着けていた。
「姉様、どうしてここに、それにそのお姿は?」
 リョウカはこれまでにヒナがこのような格好をしているのを見たことがなかった。村の長であるウズメと似たような神聖な雰囲気が漂っている。
「ああ、これ…」