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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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 ヒナは両手を広げる。
「久々に着てみたけど、どうかしら、似合ってる?」
 ヒナはそのままくるりと回り、右手を頭の後ろにやってポーズをとった。その姿にロビン達は魅了されてしまった。
「いえ、そうではなくて…」
「冗談よ」
 ヒナは笑って見せた。
「リョウカ、あなたに言ってなかったと思うけど、あたし、ウズメの真似事ができるのよ」
 ヒナは言った。
「ウズメ様の…それは一体どういう…」
「まあ、正確にはこれはあたしにしかできないんだけどね」
 ヒナはガイアロックの岩山を見上げた。
「さあ、みんな、上へ登りましょう。あたしについて来て」
 ヒナは袖をたくし上げ、背中で結ぶと岩に手足をかけ、登り始めた。
「姉様、一体どうなさるおつもりなのですか!?」
 リョウカは大声で訊ねた。ヒナは下を見て答える。
「もちろん、オロチを倒すのよ…!」
 それだけ言い、ヒナは再び岩山を登り始めた。
「リョウカ、どうする?」
 ロビンは訊ねた。
「姉様が何をなさるのか分からない、だが、今のままではオロチを倒すことは無理だ。ここは姉様の考えに従おう…」
 リョウカもヒナの後を追って岩山を登り始めた。
「オレ達も行こう」
 ロビン達もその後に続いた。
 ヒナにはウズメをも超える呪術的力があった。エナジーとはまた違った類の力である。世界の様々な場所の様々なものに宿る精霊の力を使い、天候さえも変えてしまうような、そんな力を持っていた。
 しかし、このような大きすぎる能力を持っているが故に、ヒナに出来ることは大きく限られてしまう事となった。
 ヒナもウズメも大地の精霊の力を使い、特殊な力を使うことができるということは同じである。主にウズメはそれにより未来を予知する能力が使え、これを占いに使っている。また、エナジーもかなりの威力を誇っている。
 対するヒナは精霊の力の極みを使うことができ、これにより天候を変えるなどといった自然を超越した事が可能である。その代わりにウズメと違い予知能力などは使えず、エナジーも強いものは一切使えないのである。
 ヒナに宿ったこの能力、その全ては村に仇なすオロチを退けるためだけにあるようなものだった。
 ガイアロックの岩山はとてつもなく険しい道のりであった。急斜面で、岩壁を登っているようなものだった。
 途中、何度か登っている最中に土の中から魔物が現れる事があった。土竜のような魔物で、ロビン達は驚いて真っ逆様に落ちそうになった。このような所から落ちればまず助かることはないだろう。魔物はロビン達の驚く様を見てケラケラと笑って土の中に潜っていくだけで、攻撃を仕掛けてくることはなかった。
 ロビン達よりも先を行くヒナはすごかった。魔物がヒナを驚かそうと顔を出した瞬間も微動だにしなかった。そのまま目もくれずに首を掴むと、下の地面へと投げ落としたりもした。
 リョウカもそうであるが、ヒナは動きにくそうな袴を履いているというのに、スルスルと岩山を登っていく。時折風が吹くと、袴の裾が捲れ上がり、ヒナの脚が露わとなった。ロビンはその度に目のやり場に困ったが、うっかり下を見てしまえば足が竦んでしまいそうだった。仕方なくロビンは見てみぬふりをしていた。
 しばらく険しい岩壁の道を進むと、やがてガイアロックの頂上へと辿り着いた。
 頂上には何もなく、ただ木のみが立っていた。しかし、少し頂上を歩くと中心付近に小さな祭壇があった。その周りにはイズモ村にあったストーンヘンジのように並べられた石柱が四本立てられている。
「着いたわね…」
 やれやれ、とヒナは一息ついた。
「おいおい、こんなとこまできて何をしようってんだ、オロチがいるのはここじゃないぜ?」
 ジェラルドは言った。
「慌てないのジェラルド、今から面白いものを見せてあげるから」
 ヒナは微笑むと、持っていた布の袋から人形を取り出した。
「何だか、不思議な雰囲気の人形ですね…」
 イワンは言った。
 手足の短い人形で、目が大きいがほぼ閉じている。薄目を開けているようにも見える。何より特徴的だったのは人形の胸である。人間の女性のそれのような形をしていたのだ。
「姉様、それは一体…?」
「これはあたしの家系に代々伝わる秘宝、その名も『踊る人形』よ!」
「踊る人形…!?」
 リョウカは驚いていた。それもそのはずである。この人形は一族に伝わるものすごい力を秘めたものであると聞かされていた。もちろん、そのような事情を知らないロビン達は何故リョウカが驚いているのか、そしてこの人形が一体何なのかまるで見当がついていなかった。
「おいおい、踊る人形って、どの辺がそうなんだよ、全然踊ってねえじゃねえか」
 ジェラルドは苦笑して言った。
「人形が踊ったらそれはそれで怖いけど、ジェラルドの気持ちは分かるわね」
 ヒナも微笑した。
「けど、この人形は踊るわ。言い伝えが本当なら、きっとね…」
「言い伝え?」
 ジェラルドは方眉を上げた。
「…この人形には、大昔の巫女、アマテラスの力が封じられているの…」
 太古の昔、ミコトがオロチを封印して間もなく亡くなった後、その姉であるアマテラスは巫女である事をやめ、村の男と一緒になった。ミコトには子がいなかったため、一族を絶やさないためにも仕方ないことだった。
 アマテラスが巫女をやめる時、彼女の持つ巫女の力を全てある人形へと移した。それが『踊る人形』である。
 どうしてアマテラスはこのような事をしたのか、その理由はやはりオロチにあった。
 オロチはミコトの力によって封じられる事となった。しかし、滅んだわけではない、その身体はこの世界に確かに存在していたのだ。
 将来、ミコトが命を賭して守ってくれたイズモ村に、再びオロチの魔の手が振りかざされるような事があってはならない、とアマテラスは危惧し、自身の巫女の力を完全に消し去るのではなく、ある媒体に封じる事にしたのだった。
 アマテラスの持つ巫女の力、それは天候をも操る力であった。彼女のこの呪術的能力はミコトの勝利に一役買うことにもなっていた。
 その後、イズモ村は何度か大雨による水害が相次ぐ事となった。その度にアマテラスの力が封じられた人形が使われ、大雨から人々は救われてきた。
 どんな天候であってもたちどころに眩しく輝く太陽を出現させてきた。そんな力を人形に封じたアマテラスはイズモの民から『太陽の巫女』と呼ばれるようになった。また、その人形は力を解放させると踊るように動くことから『踊る人形』と呼称された。
「けど、誰でもこの人形の力を使えるってわけじゃないの」
 ヒナは言った。これまでもごく限られた者だけが使うことができたのだという。
「限られたって、一体どんな…」
 ジェラルドは訊ねる。
「分からないようね、ジェラルド…」
 ヒナは呆れたように溜め息をついた。
「この人形の力を扱えるのは太陽の巫女の血を引く者だけ…」
「それでは、姉様は…!?」
 そう、ヒナは目を伏せ、そして言い放った。
「あたしは太陽の巫女、アマテラスの末裔よ!」
 そして、ヒナは続ける。
「今踊る人形を使えるのはあたしだけ…」
「あの、リョウカでは使えないのですか?」
 ふと、イワンが訊ねた。