Wizard//Magica Wish −13−
………
「ふぅ…ふぅ…」
「……どうしたの…ぐっ…はやく私を殺しなさい…指輪の魔法使い…!」
これで良いのか?
奴の首元に突きつけた剣が、これ以上動かない。
このまま力を込めれば、全てが終わる。
なのに、何故?
一体何を拒んでいるんだ?
いや…まて。
これで、本当に良いのか?
−何を恐れる…早く奴を倒せ−
「…っ!…うるさいっ」
「…?」
もう、失う物は何もないんだ。
今更、躊躇したところで何がある?
全てはこいつが…こいつが現況なんだ。
「っ!…くっ…」
「指輪の魔法使い…いい加減にしなさい…私を倒すつもりなら…早くっ…ぐぅ!…」
−倒せ…早くそいつを倒すんだ−
何か…俺は忘れていないか?
とても大事な…大事な事を。
−そんな事はどうでも良い、早く倒せ−
「お前は黙っていろ、そんな事言われなくても、俺は…あっ、ぐぁぁ!!」
ふと、ウィザードの身体に激痛が走った。
左手で胸元を抑え、苦痛に耐える。
既にボロボロで回復する魔力すら持たないフェニックスは地に膝を付きながらただその光景を見ているだけだった。
「あぐっ…駄目だ…まだ…」
杏子のソウルジェムをウィザードリングに変えてしまった為、ハルトの中に溜まっている穢れと因果が暴発寸前だった。なんとか無理やり押さえ込むのが限界なのだ。
もちろん、これ以上強力な魔法を使えば後がない。
ミサを倒すのは、今が最大のチャンスだった。
「ぐふっ…う…はぁっ…はぁっ…」
「何をためらっているの?早く私を倒しなさい!!」
「はぁっ…はぁっ…」
「どうしたの!?指輪の魔法使い!!」
「う、うぅぅぅ…うあぁぁぁぁぁ!!」
−そうだ、力を込めろ…怒りに身を任せろ!!−
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!…っ!!?」
右手に持ったウィザーソードガンを大きく上に掲げフェニックス目掛けて振り下ろした。
だがその瞬間、ハルトの目の前が真っ白になった。
作品名:Wizard//Magica Wish −13− 作家名:a-o-w