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華音の女王(アルエド+ハイウィン+オリキャラ)

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その時、コンコンと部屋の扉がノックされた。
「おう、良いぜ」
「───入るわよ」
柔らかな声と共に扉が開き、最初に姿を見せたのは。
「どう?話はまとまりそう?」
「母上…それに父上も」
長い髪をバレッタでまとめ上げた母と、双子のようにお父さんとそっくりな父。
「ああ、ばっちりだ。さすがはオレ達の娘だ、肝が据わってる」
「あったりまえでしょ、あたしが産んだ子なんだから」
自信たっぷりに胸を反らす母上は若々しくて、とても成人した3人の子持ちには見えない。私と並べば姉妹のようだ。
父上も同様で、お父さんやお父さま、それに弟たちと並んでも親子には見えない。せいぜい年の離れた兄弟か、従兄弟くらいが関の山だ。
───そういえば誰だっただろう、『姫様、お身内のことをこう言っちゃなんですが、陛下達の童顔ぶりは怪物のようですよね』と言っていたのは。
「エディ、突然の話でびっくりしたでしょう?」
「ええ。でもお受けすることにしました。頑張りますね、父上、母上」
「うん、エディなら大丈夫だよ」
私の頭をぽんと撫でて、父上が笑う。
「…ああもう、なに突っ立ってんのよ!入っていらっしゃい」
それから母の声に促され、続けて入ってきたのは。
「…では、失礼いたします」
静かな低い声、短い黒髪に薄茶色の瞳の青年。
「……クロノスさん」
扉を閉めると、彼は私達の座るソファの前で深々と一礼して、無表情のまま口を開いた。
「───陛下、右宰相様。ハイデリヒ侯爵からお話は伺いました。ですが、私のような若輩者にそのような大役は」
「若輩者の前例はここにいるよ、クロノス。…ボクがきみを推したんだ」
「右宰相様…」
そうだ、お父さんは成人してすぐの十五歳で右宰相に就任していたのだった。
この、歴代最年少記録での宰相就任は、これからもきっと破られることがないだろう。
「新しいサリアン公爵として、執務に励んで欲しい。きみほどの人材が副官以下の椅子に座っているのは、はっきり言って役不足だ」
「ああ、同感だ」
頷いたお父さまに、クロノスさんはわずかに表情を変える。戸惑っているのだ。
「しかし、右宰相様は」
「…前から言ってるだろう?ボクの王は兄上だけだ、とね。エーデルハイトも納得してる」
「ええ。だってお父さん達のことですもの、お気持ちは物心付く前から存じておりますわ」
「エーデルハイト様…」
そっと立ち上がり、私はクロノスさんの前に立つ。
背の低い私は、長身の彼をうんと首を傾けて見上げなければ視線を合わせられない。
「ねえクロノスさん、あなたさえ良ければ、私はあなたを次の『橘』に指名したいわ」
「ですが、私は」
「私、ずっとお父さまやお父さんの傍で勉強していましたから、あなたの手腕は知っています。国を思う気持ちも、民を思う気持ちも。だから是非、あなたに私の『右腕』をお願いしたいの」
国内情勢を司る右の府、その右の府の長である『橘の宰相』。
きっと彼なら、お父さんのように立派に働いてくれる。
「再来月、私がお父さまの跡を継いだら、あなたに橘の花を差し出すわ。…受け取って、いただけるかしら?」
ことりと首を傾げながら尋ねれば、しばしの沈黙の後、彼は私の前に跪いた。
そしてそっと、大きな温かい手で私の右手を取る。
「───エーデルハイト様のお心に添えるよう、誠心誠意お仕えします」
「では…」
「はい。この不肖クロノス=E=サリアン、橘の宰相への拝命、謹んでお受けいたします」
ふわりと羽のように、右手の甲に口づけが落とされた。
「ありがとう。よろしくお願いしますね」









「じゃあこれで、足場固めは大体良いわね。あとはラング様の後継になる左宰相や、残りの大臣だけど…」
「その辺はエディの目で見極めさせましょう。エドワードさんやアルフォンスくんが全員を選んだんじゃ、この子の為にならないよ」
「そうですね、エーデルハイトの人を見る目は確かだから、心配はないでしょう」
「しわくちゃの年寄り連中からオレ達くらいの世代まで、選り取り見取りだからな。オレみたいに、期間設けて泳がせて篩に掛ける、っていう手もあるけど」
「この人だって思ったら迷わず声を掛けるんだよ、エーデルハイト」
「はい、そうします」
一人前の大人扱いをしてくれる両親達に、こくりと頷く。
責任は重大だけれど、なんだか楽しみだ。