機動戦士ガンダムRS 第26話 キラ
「あまり作業を行わない場所や人が通るような場所を中心にそれ以外も見ましたがもうありませんでした」
今度は、チャールズ少尉が報告した。
「よし、それなら荷物運びは終わりにしよう。
ご苦労様」
2人は、敬礼してブリッジを後にした。
※
2人は、下士官室に戻った。
そこにちょうどキグナン少尉とシーサー少尉も来た。
「お前たちも終わったところか?」
キグナン少尉が2人に声をかけた。
「そう。
お疲れさま、キグナン少尉、シーサー少尉」
「あれ?
ミサキ中尉は?」
チャールズ少尉がミサキ中尉がいないことに気づいた。
「実は、ミサキ中尉が搬入リストを紛失寸前にしちゃって」
ニール少尉とチャールズ少尉が驚いた。
「まあ、ステファニー軍曹がミサキ中尉の部屋で見つけたから事なきを得たけどそのせいでシグマン大尉にしかられてる」
シーサー少尉が説明すると4人は、人事のように笑った。
※
キラ少尉は、ストライクガンダムのコックピットの中でキーボートを打っていた。
「早いなお前、キーボード」
キラ少尉は、声がしたので上を見た。
そこには、昨日殴りかかった少女が立っていた。
「なんだお前か。
誰がストライクに乗ってるかと思った。
その服は、どうした?」
少女は、キラ少尉がなぜモルゲンレーテの作業服を着ているのか気になった。
「ああ、工場の中で軍服でうろうろされるとまずいからって言われて着せられたんだ。
それよりどうしたの?」
キラ少尉は、モルゲンレーテの作業服を着ている経緯を話しここにいる理由を聞いた。
「昨日は、悪かったな。
殴るつもりは、なかった訳でもないがあれは弾みだ。
許せ」
少女は、キラ少尉に昨日のことを謝りに来た。
しかしそのあまりのぎこちない謝罪におかしくなりキラ少尉は、思わず笑ってしまった。
「何が可笑しい」
少女は、せっかく謝っているのに笑ったキラ少尉にむっとなった。
「いや、だってぎこちなかったから」
キラ少尉は、素直に理由を言った。
「ずっと気になっていた。
あの後お前は、どうしただろうと」
少女は、ヘリオポリスでキラと別れた後もキラの安否をずっと心配していたのだった。
「なのに今は、地球軍パイロットとして現れようとはな」
少女は、今のキラ少尉の姿をとげのある言葉で言った。
キラ少尉は、キーボードを打つ手を止めた。
「いろいろあったんだよ」
キラ少尉は、重々しく答えた。
少女もその声色を感じそれ以上追求しなかった。
「ところでお前の名前は、何だ?」
少女が話題を替えた。
「キラ。
キラ・ヤマト」
キラ少尉が答えた。
「カガリ・ユラ・アスハだ」
カガリが答えるとキラ少尉は、驚いた。
「アスハってウズミ前代表の娘?」
キラ少尉が質問した。
「娘で悪いか?」
逆にカガリが質問した。
「でもそれでやっと分かったよ。
あの時カガリがモルゲンレーテに居た訳」
キラ少尉は、カガリの正体がわかったことでなぜヘリオポリスにいたのかわかった。
「まあな。
モルゲンレーテがヘリオポリスで地球軍のモビルスーツ製造に手を貸してるって噂を聞いて父に言ってもまるで相手してくれないから自分で確かめに行ったんだ」
カガリがヘリオポリスに行った経緯を話した。
「でも知らなかったことなんだろ?
お父さんてかアスハ前代表は」
キラ少尉は、アスハ前代表が知らぬうちに一部のものが勝手に進めたことだと聞いていたのでその真偽を確かめたかった。
「内部では、そういう者も居るってだけだ。
父自身は、そうは言ってない。
そんなことは、どうでもいいと。
ただ全ての責任は、自分にある。
それだけだと。
父を信じていたのに」
カガリは、いまだ裏切られたことを根に持っていた。
「電磁流体ソケットの摩耗が酷いな」
そのとき整備員のあきれ声が響いた。
「駆動系は、どこもかしこもですよ」
「限界ギリギリで機体が悲鳴上げてるよ」
その声からストライクガンダムは、整備員の予想を超えた消耗をしているらしい。
「だってさ」
カガリは、キラ少尉に聞こえるように言った。
キラ少尉は、ストライクガンダムのコックピットが出てきて機体を見回した。
「それでも護れなかったものが沢山ある」
キラ少尉は、その場を去った。
カガリは、そっとしておこうとあえて追いかけなかった。
※
キラは、休憩室に来た。
そこでアスランに会った。
「ストライクの整備は、順調か?」
アスランは、自販機で買った飲み物をキラに渡しながら質問した。
「うん。
でも部品の消耗や磨耗が激しくて機体全体が悲鳴を上げちゃってる状態なんだ」
アスランは、キラの話を聞きながら自分の分の飲み物を買った。
「そうか。
でもそれくらい無茶やらないと死神と互角には、戦えないか」
アスランは、少し納得したようにいった。
「互角なんかじゃないよ。
実際戦ってるからわかる。
サオトメは、手加減をしてるって」
キラは、表情を暗くしながら言った。
「そうか。
でもそれもすごいことじゃないか」
キラは、アスランがどうしてほめたのか理解できなかった。
「だってそうだろ?
皆は、アークエンジェルと自分を護るのに必死で相手の戦い方なんていちいち気にしていられない。
でもお前は、死神が手加減してるって戦って気づいたんだろ」
キラは、アスランに指摘されはっとなった。
自分は、サオトメの足元にも及んでいないと自分の成長を実感できなかったが実は成長していたのだった。
「そういうことだ。
期待してるぞ、エース」
アスランは、笑いながらキラに言った。
「もう、そういうことが重荷になるんだよ」
キラは、むっとなった。
しかし実際は、重荷になどなっておらず楽しいひと時を送っていた。
「ところでキラ君」
アスランは、飲み物を全部のみカップを捨てるといたずらっぽい目つきで腕をキラの首に巻きつけた。
「な、何」
キラは、アスランがこんなにも興味を抱くような行為に心当たりがなかった。
「君も隅に置けないね。
お嬢様にフラれたから今度は、お姫様に手を出すとは。
お兄さんは、弟がそんな趣味を持っていたとは思わなかった」
キラは、大きくため息をついた。
おそらくお姫様とは、カガリのことで先のストライクガンダムで会話をしているところを見られたのだろう。
しかしそのせいでアスランは、大きな誤解をしてしまったらしい。
「別にカガリとは、アスランが思っているような会話はしてないよ。
ただ昨日殴りかかってきたことについて謝りに来ただけ」
キラは、アスランに事実だけを言った。
「もう名前を聞き出したんだ。
それにお姫様に殴られるようなことをしたのか?」
しかしアスランは、それを誤って受け止めてしまったらしい。
「ヘリオポリスで地球軍のモビルスーツを開発してるって言ううわさがオーブ本国にも流れててカガリは、それをアスハ前代表に問い詰めたんだけど相手にされなかったらしい。
それで直接見に行ったらコロニー軍の襲撃に巻き込まれてたまたま僕に助けられたんだ。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第26話 キラ 作家名:久世秀一