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【カイリン】十四歳の亡霊

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朝、リンは目を覚ますと、横で寝ているカイトをぼんやり見下ろす。


ああ、そうか。一人じゃないんだ。

・・・・・・夢じゃないんだ。


ぼさぼさの髪を手でかき上げ、立ち上がってカイトを踏みつけた。

「起きろよ、ボケ」
「ぐぇっ!」

床に転がるカイトは無視して、洗面所に向かう。顔を洗い、髪を撫でつけた。台所へ向かって冷蔵庫から昨日の総菜を取り出すと、適当にレンジにつっこむ。
背後にカイトの近寄ってくる気配がした。

「朝ご飯はまだかいのう?」
「イヤだわおじいちゃん、昨日食べたでしょ」
「リンが冷たーい」
「いいから、顔洗ってこいよ」

温めた総菜とパックのご飯をローテーブルに並べていると、カイトがタオルで髪を拭きながら出てくる。向かい合って座り、リンが横取りを警戒しながら食べていたら、

「必要なもの揃えないとねー。着替えとか。あ、夕飯は何がいい?」
「え?」
「まあ、常識の範囲で。ハンバーグとかカレーとか。その前に昼があるか」

カイトは、真面目くさった顔で頷いた。

「昼ご飯、何がいい?」
「い、今決めるのかよ」
「お腹空いてる時に決めると、あれもこれもになっちゃうからさ」

リンは割り箸を置くと、俯く。

「・・・・・・り、理由とか、聞かない、の、かよ」

何で家に帰らないのか、何で一人で町をうろついていたのか、親は心配してないのか、不審に思われても仕方のない状況なのに。

「さあ、何でだろうねー。リンの熊がボロボロだったから、かな」
「え?」

顔を上げると、カイトはニコニコ笑って食べ続けていた。

「まあ、いいんじゃない? 話したくなったらで。俺だって、リンに何もかも話してる訳じゃないし」

言われて気づけば、カイトのことを何も知らない。家族はいるのか、仕事は何をしているのか、何故自分が見えたのかーー

「カイトは」
「あ、やっと名前で呼んだ。良かった、教え忘れたかと思ったよ」

カイトの気の抜けた笑顔に、リンは言い掛けた言葉を飲み込んで、ハッと笑った。

「昼はオムライスがいい」
「お、いいねー。賛成。じゃあ、食べたら買い物行こうか」
「作れんの?」
「大丈夫、俺、オムライス検定1級だから」
「ねーよ」