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【カイリン】十四歳の亡霊

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それは、カイトが仕事で出掛けた時のこと。
リンは部屋で一人、テレビを見て過ごしていたが、お茶を飲もうと冷蔵庫へ行き、流しに空きペットボトルが転がっているのに気づいた。


あー、回収箱に入れんの忘れてた。


カイトが帰ってきたら一緒に行こうかと考えて、どうせすぐだからと、一人で行くことにする。
ペットボトルとテディベアを手に玄関に鍵を掛けて、リンは本当に久しぶりに、一人で外に出た。


そういや、最近は一人で外に出なかったな。


いつも出掛けるときはカイトが一緒で、それが当たり前になっていた。


特に用事もないけどなー。


閉じこめられている訳でもないし、合い鍵も渡されているのだから、自由に出掛けられる。それでも、カイトのいない空間が妙に寂しくて、リンは目当ての回収箱にペットボトルを投げ込むと、すぐにきびすを返した。その時、後ろを歩いていた男性にうっかりぶつかってしまう。

「あっ、ごめんなさい!」

すぐに謝ったが、相手は何事もなかったかのようにさっさと行ってしまった。

「何だよ、感じ悪い」

ぶつぶつ文句を言った後、ハッとして顔を上げる。それは、覚えのある光景だったから。

リンが、カイトと出会う前の。

慌てて、すぐ近くにあった小さな店に飛び込む。カウンター前で退屈そうにしている中年女性に、リンは大声で呼びかけた。

「すみません!」

だが、相手はぴくりとも反応しない。リンの存在など、まるで気づかないかのように。

「すみません!!」

目の前で大声を上げても、飛び跳ねても、相手は退屈そうなままだ。リンは吐き気を覚えて店を飛び出すと、一目散にアパートへ駆け戻る。
もどかしげに玄関を開けて靴を脱ぎ、毛布を被ってテディベアを抱き締めた。震えながら、溢れる涙を手で拭う。
カイトが戻ってくれば、また見えるようになるはずだ。カイトさえ戻ってくれば。

戻ってこなかったら?

リンは、ぎゅっと体を丸めて縮こまる。
あの日を境に、日常から切り離されてしまったように。組織の命じるままに、切り離していった人や物のように。カイトも取り上げられてしまったら。
恐怖に押しつぶされそうになって、リンは目をつぶった。