【カイリン】十四歳の亡霊
深夜、町が寝静まった頃。
一人の男が、高架下で煙草に火をつけた。ぼんやりと灯る赤に目をやってから、煙を吐き出す。半分ほど吸ったところで、近づいてきた人影に顔を向けた。
「遅かったな」
「そうですか?」
相手はどこ吹く風で、フェンスにもたれ掛かる。
「寝ぐずられましてね。昼間一人にしたのが、余程堪えたようで」
「目を離すなと言っただろう」
「なら、組織の方に、くだらない用件で呼び出すなと言ってください。俺は別件で忙しいからと」
「ふん」
男は肩を竦めて、煙草を足下に落とした。
「首尾は?」
「さあ、どうでしょうね? ご自分の目で確かめますか?」
ふざけた物言いに男は眉を上げたが、くってかかるのは得策ではないと判断する。組織ですら掌握しきれない相手だ。いつ手を噛まれるか、分かったものではない。こいつのペースに飲まれるなと、自分に言い聞かせた。
「聞くだけ野暮だったな。『シザーズ』は、時間を掛けるだけの価値がある」
「でも、永遠には待たないでしょう?」
くすくすと笑う相手に、男は新しい煙草に火をつけながら、
「お前に任せるさ。だが、上に気づかれたら、お互い無事じゃすまないぞ」
「そうですねえ。巻き添えはごめんです」
「だったら、急ぐんだな」
煙を吐き出し、男はにやりと笑う。
「お前なら出来るさ、『ジーニアス』」
その言葉に、カイトも薄い笑みを浮かべた。
「さあ、どうでしょうね?」
作品名:【カイリン】十四歳の亡霊 作家名:シャオ