【カイリン】十四歳の亡霊
「おかーえりー」
玄関を開けると、カイトの呑気な声が聞こえた。リンは、背を向けて上がりかまちに腰を降ろす。
「鯛焼きあるよー。食べる?」
「その前に、聞きたいことがある」
「どうぞ」
「カイトは、組織に関係しているのか?」
「そうだよ」
カイトの口調は何も変わらなかった。リンは、ふっと笑って、
「何の組織だとか、聞かないの?」
「今更いらんでしょ。てか、名称あったっけ? ナントカ組みたいな」
「さあ、知らない」
「俺も知らない」
後ろでがさごそと音がして、カイトが「食べないのー?」と聞いてくる。
「気分じゃない」
「まあ、反抗期かしら」
リンは、テディベアをきつく抱き締め、
「あたしを、捕まえに来たの?」
答えを待った。けれど、返ってきたのは、
「何で戻ってきたの?」
「聞いてんのはあたし」
「逃げればいいのに。そのつもりで出てったんでしょ?」
そのつもりで出ていったのだ、あの時は。
でも、今は、
「さあ、何でだろうね。この子を直してくれたから、かな」
「大事な物なんだ」
「うん、大事。あたしに残ってるのは、この子だけ」
「俺はー?」
足音がして、背後にカイトの気配がする。
「俺は、リンのことが大事だよ」
リンは、テディベアに顔を埋めた。
「・・・・・・あたしも、カイトのことが大事だ」
「じゃあ捕まって、俺の為に」
肩越しに差し出された制御装置の鈍い光を、リンはぼんやりと見つめる。
「いいよ」
作品名:【カイリン】十四歳の亡霊 作家名:シャオ