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【カイリン】十四歳の亡霊

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リンはカイトとビルを出る。テディベアを抱え直し、首元をさすって、肌に残る冷たさを消した。
カイトが手を伸ばしてきて、リンの手を握る。

「まだ気になる?」
「んー、もう平気。二度とつけたくないけど」
「そうだねー」

表には人も車の気配も無かった。カイトが何をしたのか、詳しくは知らないけれど、もう組織の影に怯えなくていいのだと言われている。それだけで十分。

「『ジーニアス』って、なんなの?」
「んー。俺の能力。詳細は不明」
「ふざけんな」
「いいじゃん、難しいことはさー」

へらへら笑いながら、板チョコをかじり出したカイトに、

「またそんなもん食べる」
「この能力は、消耗が激しくて」
「詳細は不明なんじゃないのかよ」
「分かんなくても、お腹は空くでしょ」

そのおかげで自分も助けられたのだから、これ以上責めるのは悪いなと、リンは言葉を飲み込んだ。代わりに、

「何で、あたしのこと助けた?」

そこまでする義理があるのか、カイト一人なら、もっと簡単に逃げられるだろうにと、ずっと心に引っかかっていた。何も知らない自分が、酷く恩知らずな気がして。
まじまじとこちらを見つめるカイトの視線に気づき、リンは頬を膨らませる。

「何だよ」
「やっぱり忘れてるよー」
「何が」
「まあ、そのうち思い出すんじゃない?」

またそれかと、リンは溜息をついた。

「秘密主義も大概にしろよ」
「そんなつもりはないんだけどねー」