【カイリン】十四歳の亡霊
公園のベンチまでやってきて、男はリンを振り返る。
「大人しくしてるって約束するなら、離すけど?」
「・・・・・・分かった。約束する」
リンは内心舌を出しながら、殊勝に答えた。男は頷くと、
「はい、『約束』したー。ここ座って?」
手を離して、ベンチを示す。
・・・・・・え?
全力で駆け出すつもりだったのに、何故か足が動かなかった。怯えた顔で男を見上げると、相手はにこっと笑い、
「ほら、座って。お腹空いたでしょ?」
リンの腕をとって、ベンチに座らせた。
「・・・・・・・・・・・・」
「はい、好きなの選んでいいよー」
コンビニの袋を渡され、リンはそれを膝に置く。逃げたいのに、体が言うことを聞かなかった。リンはその時初めて、相手の男も何らかの能力者ではないかと思い当たる。
「・・・・・・あんた、何者だよ」
乱暴な言葉に、相手の男は苦笑を漏らした。
「あんたって。カイトだよ、忘れたの?」
「最初から知らないし」
「えー、そうなんだ。じゃあ、初めまして、リン。俺はカイト。宜しく」
「初めましてで、何であたしの名前知ってんだ」
「まあ、いいじゃん。細かいことは。ほら、先に選んでいいよ?」
促され、リンは最初に取ったパンを選ぶ。
「はい」
袋を返すと、カイトは弁当を取り出し、
「はい」
リンのパンを取り上げ、弁当を押しつけてきた。
「ちょっと!」
「こんなんじゃ足りないでしょー。遠慮しなくていいから」
「ふざけんな!」
だが、カイトはさっさとパンをかじり始める。リンは苛々しながら、弁当のビニールをはがした。
作品名:【カイリン】十四歳の亡霊 作家名:シャオ