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【カイリン】十四歳の亡霊

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遅い昼食を済ませた後、町をぶらついたりうろちょろするカイトを連れ戻したり、買い物をしたりうろちょろするカイトをぎゃんぎゃん叱ったりしていたら、あっと言う間に日が傾き始めた。

「俺、そろそろ帰るけど、リンはどうする?」
「え?」

手を繋いだまま、カイトは昨日と同じ問いを口にする。「一緒に来る?」と。

「・・・・・・・・・・・・」

自分が見上げている相手は、組織に関わりのある能力者かもしれない。けれど、今この手を離したら、次はないかもしれない。リンは、反対側に握ったテディベアを胸の前に抱いた。

「・・・・・・行く」
「そう。じゃあ、必要なもの買ってこうか。うち、お泊まりセットとかないし」
「うん」

急に大人しくなったリンに構わず、カイトは相変わらずの調子で歩き出す。リンは、カイトの手とテディベアの両方を離さぬようにと、ぎゅっと力を込めた。



連れてこられたのは、小さなアパートの一室。最低限の家具だけが置かれている部屋に、生活の匂いを感じない。


・・・・・・あれ、ヤバイ、かも。


背後で扉を閉められ、鍵にチェーンまでかけられて、初めてリンは別の可能性に思い当たった。今まで、テレビか新聞のニュースの中の出来事でしかなかった事が、急に現実味を帯びてリンに迫る。

「どうぞー。狭いけどー」

カイトの呑気な声に、リンはそろそろと靴を脱いだ。いざとなったら大声を出そうと構えていたが、カイトは流しに買い物袋を置くと、突然床に転がる。

「ちょっ!? 何して!?」
「一日歩き回ったから、疲れちゃったー。あ、好きにしてていいよ」
「えっ、あっ、でも、え?」

戸惑うリンを尻目に、カイトはもそもそと体勢を変えたあと、落ち着いたのかそのまま目を閉じてしまった。少しして、微かな寝息が聞こえてくる。

「ちょっ、寝るのかよ」

リンは脱力しつつ、先ほど危惧した内容を鼻で笑い飛ばした。


こいつに、そんな度胸ないって。


カイトに近づき、眼鏡を外してローテーブルの上に置くが、相手が気づいた様子はない。好きにしていいと言ったのだからと、勝手にタンスを漁って、シャツとタオルを引っ張り出した。

「シャワー借りるから。覗くんじゃねえぞ」

念の為声を掛けるが、反応はない。リンは「しょうがねーなー」と呟きながら、浴室に向かった。