fate/destruction
Episode.3
通学路では何事もなく、
無事に誰にも会うこともなく、
学園の校門にたどり着く事が出来た。
まあ、わざわざそんな時間帯を選んで登校しているのだが…
どうせ居てもいなくても、
私に話しかけてくる人などいない。
ただ一人を除いて…
「おはよう、長文。」
噂をすれば何とやら。
彼は、武田和音。
こんな私にいつも話しかけてくる変わり者だ。
「おはよう、長文。」
無視して歩き続けようとすると、
再び同じ言葉を繰り返す。
「お・は・よう、長文。」
「……おはよう、武田君。」
このままでは、明らかに埒が明かなそうだったので、
ぼそりと、挨拶を返す。
そんな私を彼は満足そうな顔で、
私と同じ歩幅で真横を歩き始める。
「着いてこないで。」
「いや、俺も同じ教室だし。」
そんな事は分かっているが、
だからってわざわざ私と同じ歩幅で、
隣を歩く必要はないだろう。
彼はよほどの物好きなのか、
いつも私にむこうから話かけてくる。
ひたすら、話しかけてくる和音を無視し続けて、
2-B教室の自分の席に座ろうとすると、
私にだけ聞こえるような声で一言つぶやく。
「そう、邪険にすんなよ。
俺達は同じなんだからさ…」
いつもより低い彼の声に振り返ると、
彼は既に自分の席に戻っていた。
いったい、どういうことだろうか…
気のせいだったのかもしれない、
いや、きっとそうだ。
私と彼とで同じ所なんて全く無い。
だって、彼はただの人間なのだから。
作品名:fate/destruction 作家名:すのう。