fate/destruction
Episode.5
ここは…
ゆりかごのようにやさしく揺らされる感覚を感じて、
少し身じろぎをする。
「ん、目が覚めた?」
どこかで聞いたような声を聞き、
頭が強制的に覚醒させられる。
この声はまさか…
何とか思い瞼を開くと、
目の前には真後ろの私を、
振り返っている和音の顔があった。
端的に言おう…
つまり、私は彼におんぶされていた。
「な、な、な、何で!?
武田君に、わ、私は!?」
心底面白そうな顔をして、
彼は私を公園のベンチに下ろす。
周囲を良く見回すと、
既に真っ暗になっていて、
遠くを見渡すことすら困難だ。
いや、そんなことより、
覚えてないって…
「な、何かしたの!?」
とっさに体を両腕でかばうように隠す。
「いや、治療はしたけど、
他は何にもしてないよ。」
治療!?
パッと右肩を確認する。
そうだ、さっき私はアーチャ―に襲われて、
そして、殺されそうになったんだ。
「さっきの男は!?」
「ん、ああ、あのサーヴァントは、
自分のマスターの所へ帰ったよ。」
良かった、あいつはここには居ないのか…
いや、違う!
和音は今何と言った。
彼は確かにサーヴァント、マスター、と言った。
つまり、彼もこっち側の人間、
サーヴァントを従えているマスター…
「武田君も、マスターなの…?」
「なんだ、もう気付いたのか、
もう少し抜けてると聞いてたんだけど。
ま、いいか、早くて困る事はない。」
彼の言葉を合図に彼の後ろから、
謎の人影が現れる。
その人影をよく見ると、
金色に光る髪を肩まで伸ばし、
深紅のドレスをまとった美しい女性だった。
あまり、魔術師の才能が無い私でも分かる、
彼女は、彼のサーヴァントだ…
そうなのだとしたら、
一体どのクラスのサーヴァントだろうか。
私の知っているサーヴァントは、
私の相棒であるアサシン、
昨日私の家に忍び込んできたライダー、
それに先程襲ってきたアーチャ―。
残るサーヴァントは、
セイバー、ランサ―、キャスター、そしてバーサーカー…
ここまで、理性を保っているのなら、
バーサーカーではないだろうけど、
せめて、武器さえ分かれば、ある程度は絞れるのに…
私が、全く動かないのが面白くないのか、
一歩前に進み出て艶やかに笑って呟く。
「なぁ和音、こやつは食っても良いのか?」
作品名:fate/destruction 作家名:すのう。