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真白物語

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「それで、このことをどうしたらいいか、どうも判断がつかなくてね。警察に言ったほうがいいとは分かってはいるのだけど……」
「ノゾミとしては、あんまり関わりたくない、と?」
「関わりたくないというよりも、余計なことを言って、捜査を混乱させたくないからさ。これだって、確かな話じゃあないし……」

 すると、サトシは微笑を浮かべて、

「なるほど、ノゾミらしいな。だったら、とりあえず大岡先生にわけを話して知恵を借りたほうがいいと思う。先生なら、顔も広いことだし……」
「なるほど……」
「それなら、今日のうちにも……」

 と、彼は言ったが、やはり私にはそれも決めかねていた。
 そんな私の姿を見たサトシが、

「明日、俺と一緒に大岡先生も来ることになっているから、そのときまでに考えていてほしい。――一応、ことの顛末を俺の方から先生に伝えておくけど、これはやっぱり、ノゾミ自身の口から言った方がいいと俺は思うんだ」
「分かった。わざわざ来てくれたのに、ごめん……」
「いや、そんなこと、気にしなくてもいいよ」

 サトシは励ますように私に笑みを向けてくれたが、それから間もなくここから立ち去ったのである。
 その翌日、約束どおりサトシは大岡先生とヒカリを引き連れて私を訪ねてきてくれた。その場にヒカリがいたということもあったし、探偵とはいえ、私にとって先生は決して不愉快な人物ではなかった、むしろ好意を持っていたとも言えるので、私にも先生と話すことが不思議と楽しくなっていた。私たちは事件の話ばかりをしていたわけではない。むしろ時間的にいえば、ポケモンやコンテストのことなどの話をしていたときのほうが多かったと言える。だが、そう言った話の合間に挟んでくる先生の質問は、実に巧妙であったと私は今にして思うのである。その日、カフェで私にあったとき、大岡先生は私にこんなことを言ってくれたのを覚えている。

「もちろん、私はあなたに昨日体験したことを語っていただきたいのですが、私は改まって話を伺うということが好きではないのです。と、いうのも、やはり改まって話を伺うとそこにはとかく間違いが生まれてしまうものですからね……ですから、これから、私やサトシ君と話していく中で、私の質問に対してそのとき、そのとき答えてくれれば私としてはありがたいと思います。もちろん、効率的なやり方ではないとは思いますが」

 そして、間もなく経つと、大岡先生は聞きたいことを全部私から聞きだしてしまった。暫く口を結んでなにやら考え事をしていた様子であったが、不意に立ち上がると、

「失礼、ちょっと電話をかけてきますからここで待っていてください。すぐに戻ってきますから……」

 と言って、カフェの電話があるところにまで向かっていった。私たちはその姿を追って三人で顔を見合せたが、私も小用に向かったとき先生の後ろを通ったのだが、そのとき私の耳に妙に興奮した声が入ってきた。

「ジュンサー君、これは普通の殺人事件ではないよ。犯人によって綿密に計画された事件なんだよ。本当に、本当にね……」

       六.

 それから、私たちは事件と関係のない、とるに足らない会話をしてから後に別れた。大岡先生はあのとき後ろに私がいたことを気づいていたかは分からないが、何事もないように笑みを浮かべていた。私も努めて平静を装っていたものの、私の心臓は、緊張と興奮でまたどきどきと踊って、頭の中では電話をしていたときの大岡先生の言葉がグルグルと回っていた。

「ジュンサー君、これは普通の殺人事件ではないよ。犯人によって綿密に計画された事件なんだよ。本当に、本当にね……」

 そして、その興奮はその日一日続いていたのである。
 さて、その日から早くも一週間あまり経った。私は例にも漏れず忙しく毎日毎日カントー中を駆けずり回っている。本当ならばヒカリを残してシンオウ地方に帰郷するつもりであったが、カントー地方に居る知り合いのもとを訪ね歩かなければならなくなったのである。しかし、その間にも忘れることが出来ないのは、あのミクリカップで経験した異常な事件のこと、事件から一週間あまりたった今でも彼女の事件の記事は、今でも社会面に大きく載っており、その後の成り行きを、つまびらかに知ることが出来た。
 しかし、そんな私の余計な心配をよそに、事件のほうは一週間近くたっても特に進展はない様子であった。捜査の糸は私が報告したあの体験からぷっつりと切れて、そこから一歩も前進しない。今のところ、私が彼らに会ったとき、彼女が生きていたのか死んでいたのかも分からない、つまるところ、犯行の現場も分かっていないのだ。
 久川舞はあの日、星野紗江子の優勝パーティーを体調がすぐれないという理由で途中退席し、それからの行方が分からなくなっていたということであった。しかし、久川舞が殺された時刻、星野紗江子一行はまだパーティーを続けていたために、彼女たちへの疑惑は一応とけたと聞いた。
 私はその日、ヤマブキシティに戻ってきてヒカリと会う約束をしていた。待ち合わせ場所のカフェに入ると、ヒカリは私に背を向けていて、テーブルを挟んでサトシととりとめのない会話をしていた。ヒカリの顔は私からは見えなかったが、サトシの顔を見るととても楽しそうな様子だったので、私はにわかに彼らをからかってやろうという衝動に駆られて、彼らが居る席に近付くと、

「やあ、お二人さん、こんなところで逢い引きかい?」

 と言うと、不意に声をかけられたせいか、二人は目を丸くして私のほうに振り返った。

「の、ノゾミ!」

 私は二人に向けてにっこりと笑うと、

「人の恋路を邪魔する奴はポニータに蹴られて死んでしまえ、とはよく言ったものだね。逢い引きの最中なら、私はこれで失礼しようと思うけど、そこのところどうなんだい、ヒカリ」
「逢い引きだなんて、もう……ノゾミの意地悪」

 ヒカリは顔を赤く染めながら、そっぽを向いた。

「私たち、シンオウを巡っていたときのことを話していたの」

 私はヒカリの言葉に自然と顔がほころんだ。彼女たちが思い出話に花を咲かせていたとすると、サトシのあの楽しそうな様子も自然と飲み込める。二人にしてみれば、一番楽しかった思い出だろうから。
 私はヒカリの隣に腰を下ろすと、女給さんにコーヒーを注文して、

「サトシ、それで事件のことだけど……」

 と、訊ねるとサトシはかぶりを振って、

「いや、先生に聞けば何か分かるかもしれないけど、――俺は事件に関して何も分からないんだ」
「そうなんだ。大岡先生は今でも?」
「最近はずっと事件に係りっきりだよ。だから、もう少ししたら犯人も捕まると思うよ」
「そう……それなら安心だよ」

 私がそう言ったとき、不意にヒカリが不安そうな顔をして、

「でも、なんだか私心配で……」
「どうしてだい?」
「あの、久川さんが殺されたときのことね。彼女ステージに出るときの格好で亡くなっていたっていたじゃない。だからね……」

 と、ヒカリはまたいちだんと声を落として、
作品名:真白物語 作家名:Lotus