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銀魂log...Vol.1

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目をあけて見る夢(銀時と土方)


男は、こちらに理解されぬ表情で辺りを、徘徊することがあった。 それは、無様な男の姿である。 背しか見えぬ暗がりの中で、男の白い頭がぽぅっと光っている。 土方は、それを見る度、自身に与えられた仕事などを全て放棄したい衝動に駆られるのだった。
男は、土方の名を呼ばぬ。 プライドなのだと、何時か男は笑った。 土方には理解できぬ、類の感情だったので、土方は大げさに首を傾げて見せた。 「多串くんには、無縁だろうね」 男は、諦めも、嘲りも、含まぬ、単純に交わらない自我などを指さして、言うのだった。
土方は、男の名を呼ばぬ。 「よろずや」 四つの音が、男の背を叩く。 倦怠を隠さぬ、その顔が此方を向くことで、漸く土方は、男が男であることを、理解するのだった。 男は、戦ぐカーテンよりも、意味のない存在である。 土方は、何時か男をそう位置づけて、それ以上の明日を、捨てたのだった。 不動の布切れを、掴もうと必死になるような、愚かしさを、土方は許さない。

男の名を知ったのは、出逢いより先であった。 白い化物なのだと、噂は、町中を駆け巡り、やがて土方に辿りつく。 ぽつねんとした、恐怖は、華やいだ道に、違和感もなく這えたのである。 刀をぶら下げた左側は、重みで歪んでいた。 土方は、そちらにばかり気を取られ、例えば男がどのような顔をして、この街で生きていたかということを、知らぬままである。
「なんかよう」
街は、愚かな火によって燃えていた。 男の顔は、火花に照らされても、尚暗い。 白い頭だけが、矢張り別の光に照らされているよう、鈍く光っていた。 土方の耳に届くのは、男の過去と、それに執着している男の幻影である。
「お前が、白夜叉なのか」

土方は、男の、昔を知らぬ。 同様に、男は、土方の、過去を覚えていないに違いない。 土方は、それを、悲しんだ。 男の口から零れる名前は、決まって己ではない、誰かである。 男が白夜叉であることを、土方は未だ、知り切れぬ。 風が吹いた。 直に梅雨の、陰鬱が訪れる。


2010/07/04


作品名:銀魂log...Vol.1 作家名:べそ