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【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動

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場内の歓声が一際大きくなる。異様な熱気に包まれた会場で、カイトが、相手をなぶるように分解していた。まるで瀕死の虫があがくように、相手は無駄な動きを繰り返す。
その様子を、クランベリーは満足げに、いろはは不思議そうな顔で眺めていた。

「なんだか、カイトじゃないみたい」

いろはが呟く。

「お前の応援が、彼を奮起させたのさ」

クランベリーの言葉に、いろはは振り向くが、またスクリーンへと視線を戻す。

「彼と戦うのが、怖くなったかい?」

クランベリーが問いかけると、いろはは勢い良く振り返った。

「戦っていいの?」
「お前がどうしてもと言うのなら」
「どうしても! お願い、マスター。もう見てるだけは嫌なの」

膝に手を乗せて上目遣いでねだるいろはに、クランベリーは苦笑しながら、頭を撫でてやる。

「全く、何処で覚えてきたんだい? そんな顔をされたら、駄目とは言えなくなるじゃないか」
「じゃあ、いいの? ありがとう、マスター!」

いろはは飛び上がると、クランベリーの頬にキスして、部屋を駆け出して行った。



「カイト!」

いろはの声がして、また背中に抱きつかれる。カイトは人目を避けて、いろはを柱の陰に連れていった。

「いろは、今日の試合、見ててくれた?」
「うん、マスターと見てた! あのね、マスターが貴方と対戦してもいいって!」

きらきらした瞳を向けられ、カイトは一瞬罪悪感に駆られるが、直ぐに振り払う。

「そう。じゃあ、俺もマスターに聞いてみるね」
「うん。ねえ、貴方のマスターは、あたしのこと気に入ってくれるかな?」
「え? 何で?」
「だって、嫌な相手とは対戦させないでしょう? あたし、あんまり出場してないけど、今のところ負けなしだから。オッズも高いし、貴方に釣り合うから」

必死な様子のいろはに、カイトは胸が痛んだが、安心させるように肩を叩いた。

「大丈夫、きっと許可してくれるよ。このところ機嫌がいいんだ」
「良かった! 早く日程が決まるといいね!」

はしゃぐいろはを見て、カイトはまた罪悪感を押し殺す。

「そうだね。あ、マスターだ。またね、いろは」
「うん! またね、カイト!」

ぴょんぴょん跳ねるいろはに手を振り、カイトはリーキの元へ向かった。