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【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動

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リーキが、情報を求めて夜の町に繰り出して行ったので、カイトは一人、ナイフを磨いていた。
ふと顔を上げると、窓にぽつぽつと水滴が垂れ、あっという間にガラス一面を濡らしていく。

あー・・・・・・まあ、大丈夫だろう。

どうせ今夜は帰ってこないだろうと、カイトはナイフの手入れを再開した。

そう言えば、あの日も雨が降っていたな。



雨に濡れた夜の町、薄暗い袋小路で、複数の男から一方的に暴力を振るわれていたリーキを助けたのは、その姿に自分を重ねたから。
無我夢中で男達を追い払い、リーキの制止を振り払ってその場を逃げようとしたら、無理矢理組み伏せられた。

「おいっ、逃げんなよ! お前、アンドロイドか。所有者は? 同業か? 俺はリーキ。所属は・・・・・・聞けよ! 暴れんな! 取って食ったりしねーから!」

そう言って、いきなりマスクをはぎ取り、恐怖で固まるこちらに笑いかけた。

「何だ、俺よりいい男じゃねえか」

焼けただれた顔から、目を逸らさずに。



後で聞いたら、他の捜査官を逃がす為にわざと囮になっていたとか。「急所を避ければ、どうってことない」と笑いながら酒をあおる姿は、とても国家権力に所属する者とは思えなかったけれど。
所有者がいないのならと引き取ってくれて、修理にも出してくれた。それでもマスクを手放せないでいる自分を、黙って好きにさせてくれる。

「機械にも心は宿るさ。俺の友達みたいに」

そうだろうか。所詮、機械は機械。プログラムに縛られる存在でしかないのに。

俺が素顔を晒せないのは、取りきれなかったバグのせいで、心に傷を負ったからじゃない。
でも、彼がそう信じるのなら。


再び顔を上げて、カイトは雨に濡れた窓を見る。
あの夜、リーキを襲っていたのも、クランベリーのような奴の手下だった。

・・・・・・いろはにも、心があるのかな。

彼女は大切に扱われていると、言えるのだろうか。