【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動
いろははクランベリーの元へ行き、言いつけ通りにしたことを伝える。
「そうか。良くやったね、いろは。やはり、お前は私の天使だよ」
「・・・・・・カイトとの試合に、影響ある?」
いろはの言葉に、クランベリーは大げさに驚いて、
「まさか。それはそれ、これはこれだよ。賭に不正を働いたら、私は袋叩きにされるだろうさ」
その言葉に、いろははやっと笑顔を見せた。
「良かった。それだけ聞きたかったの」
「私がここまでこれたのは、賭に手心を加えなかったからさ。お前が「負けてもいい」と言った時、私はちゃんと止めただろう?」
クランベリーに言われて、いろははこくりと頷く。
「うん。マスターは許してくれなかった」
「そうだろう? お前は何も心配しなくていい。全力で将軍と戦っておいで。勝っても負けても、悔いが残らないように」
「うん!」
輝くような笑顔を浮かべて、いろははクランベリーに抱きついた。
「マスター大好き!」
「あははは、私もお前が大好きだよ。私の可愛い天使」
アパートに戻ってくると、カイトはマスクを外して、
「はい」
試験管を差し出してくる。
「何だ? 誕生日にはまだ早いぞ?」
「あ?」
「すいません、調子に乗りました。で、これをどうしろと?」
「中身を分析してください。今すぐ」
リーキは、どこをどう見ても空っぽの試験管を手の中でひっくり返しながら、
「いや、無理だって」
あっさり言った。
「はあ?」
「はあ? じゃねえよ。鑑識に回さんと無理だって」
「・・・・・・何このゴミクズ。無駄に酸素消費してんじゃねえよ」
「言い過ぎだぞ!」
カイトは溜め息をつくと、ベッドに腰を下ろす。
「その試験管には、アンドロイドの機能を停止させるナノマシンが入っています。これを持ってきたのはいろは。クランベリーから指示されたのでしょう。明日の対戦に、不正を仕掛けてきた証拠です」
「確かか?」
「だから、今すぐ分析しろっつってんだろ、おっさん」
「無茶言うな。今から送っても、結果が出るのは試合の後だ。ターゲットはとっくにずらかってるだろうさ」
「だから?」
カイトの赤い瞳が、真っ直ぐにリーキを見つめた。リーキもまた、たじろぐことなく見つめ返す。
「だから、今すぐ応援を呼ぶ。俺は、お前の判断を信じる」
リーキは素早く携帯電話を操作し、特定の番号へ発信した。それは、準備が整った合図。
カイトは、ふと視線を逸らし、
「あ、見当違いだったらごめんなさい」
「ふざけんな」
作品名:【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動 作家名:シャオ