【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動
翌日、町は静かな興奮状態に陥っていた。
大半の人々は、何が起こるか分からないまま、異様な空気に不穏なものを感じて、眉をひそめる。
『闘技場で、大勝負が行われるらしい』
まことしやかな噂が流れ、人から人へ、闇から闇へと金が動いた。未だ敗戦を知らぬ二人が対峙する、そんな情報がどこからともなく漏れ聞こえ、巣穴で息を潜めていた者達も駆り立てられる。
この勝負を逃すなど、馬鹿のすることだ、と。
そして、熱気に隠れて町に侵入する者達がいた。獲物を狙う狩人達は、静かに、素早く、町へ散っていく。彼らもまた、この機を逃す訳にいかないのだ。
クランベリーは、例によってモニター前に座り、試合の様子を眺める。今行われているのは、所詮前座。本日のメインはこの後に控えていた。
「将軍」と、いろはの対戦。
クランベリーはモニターを切り替え、賭の様子を確認して満足する。前評判はいろは優位とされ、かなりの金がいろはに賭けられていた。今夜は、どちらが勝っても大荒れとなるだろう。
勝利の女神よ、今夜も微笑んでおくれ。
酒のグラスにキスをして、次の対戦へと意識を向けた。
作品名:【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動 作家名:シャオ