【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動
「ちくしょう! まさかいろはが負けるとはな!」
「さすが「将軍」だな! 俺は信じてたぜ!」
悲喜こもごもの中、突然無粋な発砲音が響き渡る。反射的に床に伏せた人々に、
「サツだ!! 逃げろ!!」
誰かの警告が、場に衝撃を与えた。我先にと駆け込んだ出口には、既に狩人達が舌なめずりして待ち構えている。
「はーいはいはい、どうせ逃げらんねーんだから、仲良くやろうぜ兄弟」
リーキが逃げようとした相手を蹴り倒し、背中を踏みつけた。
「おまっ! 将軍の!? 裏切ったな!!」
「いやいやはっはっはっ。裏切りや抜け駆けなんて、珍しくもなんともねーだろうが。今更驚くなよ」
大混乱の中走り回る捜査官の元へ、人混みを縫うようにやってきた赤い目のアンドロイドが、いきなり話しかけてきた。
「初めまして。アンドロイドの修理をやったことは?」
「は?」
「聞いてみただけ。出来るでしょ? 無理なら、出来る人探して」
そう言って、少女の姿をしたヒト型を押しつけてくる。喉元を鋭利な刃物で切られたのか、ぱっくり割れた傷から内部の配線が覗いていた。
「至急ね。あと、バグのせいで暴力衝動を抑えるリミッターが外れてるから、それも直しておいて」
「はあ? ふざけるな! そんなもの後に」
怒鳴りつけようとした言葉は、途中で飲み込む。首筋に触れる、冷たい感触。
「黙れゴミクズ。返事は『イエス』だ」
怒りに燃える目と氷よりも冷ややかな声に、わずかに頷く以外の選択肢はなかった。
作品名:【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動 作家名:シャオ