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【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動

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狂乱の宴を抜け出し、カイトは薄暗い通路を歩く。まだこの場所まで、捜査官達は到達していないようだ。
しばらく歩いたところで立ち止まり、壁をまさぐる。かちりと音がして、壁の一部が音もなく横に動いた。現れた扉とパネルの前で、カイトは肩を竦める。

「・・・・・・時間がないんで」

誰に言うでもなく呟くと、自分の首にナイフを当て、躊躇いなく引いた。切り裂いた場所からコードを抜き取り、パネルをこじ開けて配線を繋ぐ。

これも違法行為に問われるのかな。

それならリーキのほうがよほど罪が重そうだと、ぼんやり考えているうちに処理が終わり、パネルにOPENの文字が現れた。コードを外し、傷口が隠れるよう襟を直してから、そっと扉を押し開く。



モニターの中では、罵声と悲鳴と罵り合いが繰り広げられていた。ジュラルミンケースの蓋を閉めた男が振り向き、皮肉な笑いを浮かべる。

「これはこれは。将軍自らご来訪とは、光栄ですな」
「初めまして、クランベリーさん。俺の取り分を貰いにきました」
「君も賭けていたのかね? 当然、自分にだろうね。配当金は窓口で受け取ってくれ。担当がいれば、だが」

ケースを手に提げ、クランベリーは一礼した。

「おめでとう、将軍。君は富と名誉を手に入れた。敗残兵は、惨めに撤退するとしよう」
「貴方も、随分儲けたでしょう?」

カイトの言葉に、クランベリーは肩を竦める。

「私個人は大損だよ。いろはに賭けていたからね。けれど、君がこの闘技場にもたらしてくれた利益に比べれば、些細なものだ」
「いや、貴方は俺に賭けたはずですよ。事前にいろは有利の情報まで流したのですから」

カイトは、ひたとクランベリーを見据えた。

「あのナノマシンは、女性型にしか効かない」

次の瞬間、クランベリーはジュラルミンケースをカイトに投げつけ、モニターのある壁へと走る。だが、カイトは易々とクランベリーを捕まえ、床に引き倒した。

「いろはが動きを止めたのは、ナノマシンのせいじゃない。俺の為だ」

クランベリーの行動で、カイトは自分の推測が正しかったことを確信する。
ナノマシンに侵入されたら、機能停止どころかデータ全てを破壊され、修復不可能な状態になっただろう。
クランベリーにとって、いろはは「知りすぎた」のだ。

だから、切り捨てた。

カイトとの対戦も、いろはを壊す為の口実に過ぎない。「将軍」相手なら、負けても不自然ではないから。

「いろはは使い捨てか。あんた達にとって、俺らは所詮「機械」だから」

『機械は人間を裏切らない。裏切るのはいつでも人間の方だ』

「後悔させてやるよ・・・・・・捜査官に捕まらなかったことを」

燃えるような赤い瞳が、モニターの光を反射してぎらりと光った。