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【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動

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クランベリーは、モニターから溢れる歓声を聞き流しながら、報告書に目を落とす。足下では、いろはが食い入るように映像を眺めていた。

やっかいな奴が来たものだ。

クランベリーは内心舌打ちする。以前の捜査官は、いかにも型にはまった人物だった為、排除するのは楽だった。しかし、今回潜り込んできたのは一筋縄ではいかないだろう。
報告書は型通りの内容。周到に用意された偽の経歴に、本来の経歴。だが、クランベリーは直感的に、罠の気配を感じていた。

前の奴を追い払ったのは、時期尚早だったか。

偽の経歴を見破らせて、油断させる。自分の正体すら囮に使うのは、切り抜ける自信があるからだ。頭がいい上に度胸もある、やっかいな相手。

しかも、クズときた。

酒場ではかなり派手にやっているようだ。酒、女、ドラッグ。探りに行かせた手駒も、あっさり籠絡されてしまった。

毒を持って毒を制す・・・・・・か。

目の前のモニターでは、例のヒト型が黙々と相手をバラしている。対戦相手のプライドを粉々に打ち砕き、二度と立ち向かう気力を失わせるのに、十分なほど。
こいつの人気が上がれば、当然自分の名も売れ、金も手に入る。金と名誉の二つを手に入れた相手に、警戒心を抱けというほうが無理な話だ。

いいのかね、捜査官が賭け事に没頭して。

法を遵守する気は毛頭ない。高潔なプライドも職業意識も持ち合わせていない。目的の為なら泥水をすすり、敵の靴にキスするだろう。
それでいて、絶対に心を折らせない。
試しに女を差し向けてみたが、こちらの誘いは巧みにかわされ、逆に情報を抜かれそうになり、クランベリーはリーキを買収する線は諦めた。

やっかいな奴が来たものだ。

溜め息をついたら、いろはが振り向く。

「マスター、あたし、このヒトと対戦したい」
「『将軍』とか? それはよしたほうがいい」
「どうして?」
「お前をバラバラにされる訳にいかないからね」

いろはは、拗ねたように口を尖らせた。

「どうして名前で呼ばないの? このヒト、カイトっていうんでしょう?」
「彼に敬意を表しているのさ。常勝不敗の『将軍』、無敵の戦士にはふさわしいだろう?」

いろはは、納得いかない顔でモニターを振り返る。

「・・・・・・どうして、あたしじゃないの?」

その呟きは、最後のネジを外され、部品の山と化した対戦相手に向けられていた。
クランベリーは、宥めるようにいろはの髪を撫でると、

「そんなに戦いたいのかい、私の天使?」
「うん。マスター、お願い」

向き直ったいろはに、クランベリーは首を傾げて考える振りをする。

「そうだね・・・・・・彼の秘密を探ってみよう。そこから、何か対策が取れるかもしれない」
「あたし、小細工するの嫌い」
「小細工じゃないよ。彼のことをもっと知りたいだけさ。私の子猫を任せるにふさわしいかどうかね」

そう言って、いろはの頬をくすぐった。

「もうすぐ、彼が闘技場を出てくるだろう。少しお話しておいで、マイガール」