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ユースティティア

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 「さ、やかまし屋の息子は仕事に行きましたからね、二人でお話しましょうね。ああ、音声機械は止めておいても大丈夫ですよ。手話でも会話が出来ますし、ゆっくりとなら発声出来るのでしょう?時間はたっぷりありますからね。ゆったりと会話とお茶を楽しみましょう?」
アストライアはそう言うと、アムロの両手を握って微笑んだ。
「は・・・い」
アムロも母である人に満面の笑みで答えた。
「じゃあ、カフェインはあまりよくないから、ハーブティを淹れましょうか?」
「大奥様。庭の一部にハーブ園がございます。アム・・・奥様が家庭菜園と一緒に愛情かけて育てていらっしゃいます」
「ええ。聞きましたよ。素晴らしいことです。自分達の口にする物は自分達で育てる。それが生活の基本ですもの。それに、健康にも良いですからね。身体を動かす事は・・・。では、ハーブ園で摘んできましょうか」
アストライアは身軽に立ち上がって、エドワルドにエスコートされながら夫婦の居間から庭へと出て行った。

(ホント、お母様って想像の斜め上を行かれる方だわ。正真正銘、大貴族の血筋だって伺っているのに、考え方が貴族的じゃないって言うか・・・・・・。理解しきるのは当分無理・・・っていうより絶対無理・・・かも)
アムロはカウチに全身を預けて溜息を吐いた。それから、クスクスと笑い出したのだった。

「本当に沢山のハーブとおいしそうなお野菜が育ってますのね。流石ですよ、アムロさん」
ハーブ園から摘み取ってきたハーブをポットに入れゆっくりと抽出しながら、アストライアはアムロを褒めた。
「昔から植物を育てていらしたの?」
「いえ・・・下町では・・土地が・・・無いですから。プランターで、花を・・・少し、だけ」
「まぁ。それではこれだけの野菜や花、ハーブを育て出したのは・・・」
「奥様がこちらにお越しになってからでございます。お野菜は完全有機栽培、無農薬で、旬な物が食卓にのぼります。旦那様のみならず家人達も、美味しい野菜に野菜嫌いが治ってしまった者さえ居るほどでございます」
「世間知らずのお嬢様をお嫁にしなくて、あの子は賢かったのね。いえ、アムロさんがあの子を選んでくれて幸いだったのだわ。アムロさんに心からの感謝を」
アストライアはそう言いながら、アムロの前にカップを差し出した。
「とんでもない!・・・私の方 こそ、シャアに・・・大切にして・・・貰って、幸せ・・・です」
頬を染めながらたどたどしくも会話を重ねるアムロが愛しくて、アストライアはアムロの頭を掻き抱いた。
「ああ、本当に、なんて可愛らしくも賢いお嫁さんなのかしら。私も幸せでしてよ。さぁ、お口に合うかしら?私のハーブティは」
抱えていた頭を離すと、カウチの反対に置かれたソファーに座り、アストライアはアムロにハーブティを勧めた。
「いただきます」
アムロも嬉しそうに笑ってカップからハーブティを口に含む。そして、ぱぁ〜と表情をゆるめた。
「お口にあったようね」
「はい。美味しい・・・です」
「大奥様。お茶請けにスコーンとクッキーをどうぞ。こちらも奥様が手ずからお作りになられた物でございます」
「まぁまぁ。素敵だこと。・・・・・・素朴な味で美味しいわ」

そうして暫く早めのアフタヌーンティーを楽しんだ二人だったが、昼を過ぎた辺りからアムロの額に汗が滲み出してきた。
「アムロさん?具合が悪いの?」
アストライアがアムロの額に手を当てるが、熱は見られない。
しかし、アムロの表情が徐々に苦痛を堪える様相を呈してきた。
「大丈夫?アムロさん?!」
「は・・・いっ!イタッ!!」
心配かけまいと笑おうとしたアムロだったが、張ってくるお腹の痛みに、つい苦鳴が漏れた。
「お腹が?お腹が痛むの?」
「んっ・・・・・・いっ!!」
ついにアムロは張り出したお腹を抱えて蹲るようになってしまう。
「エドワルド!エドワルド!!お医者様を!!」
アストライアはアムロの背中を抱きかかえながら、有能な執事に指示を出した。
エドワルドが主治医に連絡を入れている間にも、アムロの腹の痛みは強くなり、間断が無く押し寄せる痛みにアムロは床に横になってしまった。
「こ、これは、陣痛かもしれないわ。エドワルド!!お医者様との連絡はまだ取れないのっ?!」
悲鳴に近いアストライアの叫びに、エドワルドが駆け込んでくる。
「奥様の主治医が本日は学会参加で不在だそうで・・・。当番医も現在、難産の患者様に付きっ切りで、電話口に出られないそうでございます」
「なんて事!!アムロさんの痛みは陣痛の可能性があるというのに!!」
「じ、陣痛?!」
「ええ。ただ、間合いが無さ過ぎて・・・」
「あぁっ!」
二人は困惑に俯いてしまっていたが、アムロの悲鳴に慌ててアムロの許へと駆け寄る。
「どうしたの?!アムロさん」
「奥様!お気を確かに!!・・・っ!!」
宥める二人の目の前で、アムロの下肢が濡れ始める。
「「破水?!!」」
二人は同時にこの現象を認識した。
「エドワルド。病院搬送は間に合わない可能性があります。ここで赤児を取り出しましょう」
「大奥様!!」
「貴方もあらゆる事態への対応を習得していますね?私も二人の子供を出産しています。家人の中に出産経験者がいればサポートとして入ってもらって頂戴。これは一刻の猶予もありません。協力してくれますね?」
「私の力の及ぶ範囲でしたら如何様にも!!」
「ありがとう。急いでアムロさんを寝台へ。沢山のシーツとタオルを準備して!お湯を沸かして鋏を煮沸消毒!!沐浴用のお湯も準備。力のある男性二人をアムロさんの頭元に!私に清潔な白衣を!!」
矢継ぎ早に出される指示に、KENWOODの館は上を下への大さわぎとなった。
アムロ達夫婦が休む寝台では広すぎて処置がし辛いと、家人の一人が使っているシングルベッドを夫婦の居間に運びいれ、そこにアムロを休ませる。
身体の下には清潔なシーツと沢山のバスタオルが敷かれ、アムロの下半身を被うようにシーツがかけられた。
「大丈夫よ、アムロさん。私とエドワルドに任せて!こう見えても、ソマリアやインドでの奉仕活動で出産介助の経験がありますからね。あの子の大切な貴方と赤ちゃんを、きっと無事に出産させてみせます」
アストライアはそうアムロに励ましの言葉をかける。
アムロは痛みに脂汗を浮かべながらも、その言葉に大きく頷いた。
エドワルドに連れられて来た庭師二人がアムロの頭元に立つ。

「アムロさんの片手を貴方たちで握って。相当な力で引かれますからね。踏ん張りなさい。手を洗うお湯をここに。アンナ!手を貸して!!」
メイド頭であるアンナは壮年の女性で、既に孫も居る年齢である。
「畏まりました、大奥様。奥様。私も付いております。安心して下さいませ」
アンナに励まされ、アムロの顔が少しだけ綻んだ。
しかし、次の瞬間。
「あああああぁぁぁ〜〜」
アムロが頭を仰け反らして痛みを訴える。
握られていた手は猛烈な勢いで引っ張られ、屈強な男達が引き摺られた。
「しっかり踏ん張りなさい!男でしょう!!ああ。頭が見えてきている。アンナ。ここを押さえていて。アムロさん。妊産婦教室で習ってますね?ヒッヒッフ〜の呼吸ですよ」
作品名:ユースティティア 作家名:まお