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ユースティティア

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「国務長官との会見は、今月に入って何回目になるのかね」
ホワイトハウスからの帰り道。リムジンの後部座席でシャアはギュネイに問いかけた。
「ナナイ女史のメモによりますと、既に7回目かと・・・。何をそれ程に申し立てて来ているのですか」
「ああ。アムロが開発した例の脳波感知キーボード。そのシステムの軍事転化を推進せよとの依頼だ」
「軍事利用・・・・・・ですか」
「キーボードに打ち込むより思考を読み取る方が、監視防御システムをよりスピーディで強力な物とするからな」
「・・・・・・・・・」
「何だ?」
「いえ・・・」
「何か疑問があるような顔をしておいて、その返事はおかしいな」
「自分が門外漢なのがいけないのでしょうが・・・」
「だから、何だ?」
「我社の開発した脳波感知キーボードを国も多数購入した筈ですよね」
「ああ、そうだな」
「なら、それを勝手に軍事利用してしまえば済む事では? なのに何故・・・」
「そういった疑問か」
「すみません。物知らずで・・・」
「いや。ギュネイはセキュリティ部門の人間だ。ITの特異性を知らなくても無理は無い」
「そう言って頂けると助かります」
「アムロの開発した物は、作業効率が一般的な企業ユーザークラスまでのスピードに留めている物なのだ。変更をしたくても、強固なブロックをかけてあるから変更出来ないし、しようものならシステムが破壊されるように組み込んである」
「では、スピードを上げる為には、開発者であるアム・・・奥様の手が必要と言うわけなんですね」
「アムロで構わんよ。そうだ。アムロ自身に変更をしてもらわない事には、現状維持でいるしかない。それが軍部の連中には腹立たしいのだろう。自分達の好きに出来ない機械が許せないのだろうな」
「アムロはそれを?」
「知らない。伝えてはいないからな。だが、彼女はけっしてそんな事を認めないだろう。ITの軍事利用を善しとしない性格だからね」
「確かに・・・。アムロの性格なら、平和利用以外認めない! と言いそうで」
二人がアムロの性格の件で笑いかけたその時

ドンッ

リムジンに衝撃が加わった。
と同時に、天地が激しく入れ替わる。
頑丈に作られた車が、横転を繰り返しているのだ。
ギュネイは身を呈してシャアを守ろうとしたが、着けていたシートベルトにロックがかかり、身動きが取れない。
シャアもシートベルトとドアフックを握り締め、身体を小さく丸めて衝撃を最小限にする自衛手段を取っていた。

どれ程の回数、横転を繰り返したのか定かではないが、ようやく車は停止した。
「・・・ギュネイ。・・・無事・・・か」
「・・・・・・は・・・い。かろうじて・・・。おい!・・・大丈夫か」
ギュネイが運転手に声をかけると、呻く様な声が返される。
「運転手も、意識は、かろうじて、保っているようです」
「一体、何が・・・」
互いに問いかけた次の瞬間
衝撃で変形した後部ドアを強引に軋ませながら開けて、数人の屈強な男達が侵入してくる。
「貴様ら!」
ギュネイは、こんどこそシートベルトを剥がす様に外すと男達に立ち向かおうとしたが

バチッ!

青白い旋光がギュネイの頸部で起こり、細身の身体がガクンと力を失い、床に倒れ付した。
「ギュネイ?! 貴様ら、なんのつもりだ! 私をG−ONのCEOと知っての行動か!!」
シャアは額から血を流しながらも男達に詰問した。が、男達は何も応えず、シャアの口と鼻を布で押さえつけた。
ツンとした臭気がクスリの正体をシャアに悟らせる。
“眠り薬を嗅がせるつもりか!”
シャアは息を止めて、極力吸引し無い様に努めたが、いかにせん息をしないわけにはいかない。押さえ続けられる布を介して吸う空気に、シャアの意識は混濁し始める。
“アムロ・・・”
明るく笑うアムロの顔を脳裏に描いたのを最後に、シャアの意識は闇に落ちていった。

                        2011/02/14
作品名:ユースティティア 作家名:まお