二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ユースティティア

INDEX|6ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

「申し訳ありません!」

NY本社の社屋に自家用ジェットヘリで到着したアムロとエドワルドを出迎えたのは、ナナイをはじめとする幹部役員だった。
皆一様に己を落ち着けようとしているのだが、トップの拉致とその相手が判明しない事に苛立ちと不安を隠せないでいた。
彼らの誘導でシャアの執務室へ入ると、額や腕に処置を施されたギュネイが、直立不動の姿勢で待っており、アムロの姿を見ると土下座をしかねない勢いで謝罪を口にした。

「ギュネイさん。貴方は大丈夫なんですか?」
エドワルドの気遣いにギュネイの顔が歪む。
「おれ・・・自分の事はどうでもいいんです。SPの職にありながら、守らねばならない対象者を守りきれず、むざむざと連れ去られるなど、職務怠慢も極まれりです」
『いいえ。ギュネイさんが無事で何よりでした。ドライバーの方は?』
「肋骨を数本。あと上腕骨を骨折しておるそうですが、命に別状はないとの報告を受けております」
アムロの質問にホルストが答えた。
『良かった。シャアは社員が傷付く事を何より嫌悪します。皆さんが無事でいてくれたのが幸いでした』
「しかし! CEOが!!」
ギュネイはそれだけ言うと、唇を血が滲むほど食いしばった。握り締めた拳が小刻みに震えている。
『犯人の目星はついていないのですか?』
アムロはナナイに向けて質問をした。
「今現在、利害関係で敵対する企業は殆どありませんし、恨みを買う事は・・・」
『無いとは言えませんね。G―ONの進出で業績悪化から倒産した企業はかなりな数、ありますから』
「とは言え、CEOを拉致して何をしたいのか・・・」
『犯人側からの要求の連絡は?』
「今もって何も・・・」
「妙ですな」
疑問を口にしたのはエドワルドだった。
「旦那様を拉致しておいて、既に1時間が経過しております。なのになんの要求も告げてこないというのは・・・。些か奇妙ではありませんか?」
『そうですね。・・・・・・シャアそのものが必要・・・だったのか。G−ONではなく・・・』
「・・・・・・まさか・・・」
ナナイはアムロの一言に、考えてもいなかった犯人像に行き着いた。
『ナナイさん? 何か気付いたことでもあるんですか』
「ナナイ! 思い当たるふしがあるなら申してみなさい」
ジンバ・ラルがナナイに先を促した。
「憶測で申し上げるのは些か性急過ぎるきらいがあるのですが・・・」
『だとしても、選択枝の一つとはなるでしょう? 話して下さい』
ナナイの手をアムロが握った。その手は氷のように冷たくなっており、穏やかに話しているようでいても、夫の身を案じる不安感を如実にナナイへと伝えた。
「ここ最近、国務長官との会見が重なっておりました。内容は、脳波感知キーボードの軍事転化に関する要求でした。しかし、CEOはそれをやんわりと拒絶なさっておいでです。今日も会見がありまして、その帰路に襲撃が起きた事を鑑みますと、そちらの可能性も否定出来ないか・・・と」
「そう考えれば腑に落ちる点が多々あるな。リムジンを襲撃した武器に関して警察からは報告が上がってこない。ハイウェイでの襲撃だ。他のドライバーも被害を被っても不思議はなかった事態だが、巻き込まれた者は一人も居ない」
「まさか! 自分達の要求を受諾させる為に財界トップを拉致すると?!」
「国家がそこまで愚かだとは思えんが・・・」
「しかし、現場の状態を振り返ってみると、目撃者を残さない様に道路封鎖の後に凶行に至っているようではないか?」
「・・・まさか、ほんとうに・・・・・・」

至った結論に執務室の中が重くなる。
拉致犯人が国家だとなると、要求を受け付けない限りシャアの身柄は解放されない可能性が高いという事になる。
集っていたメンバーの顔に諦めが滲んだ。

『なら、返さざるを得ない様にしてあげれば済む事です』
凛とした声が執務室に響いた。
その声に、全員が視線を向ける。
その先には毅然と顔を上げ、怒りに琥珀の瞳を煌かせる女神がいた。
『シャアはアメリカ国民ではありません。フランス人です。他国民を強制的に拉致する事は、他国に対する侵略行為に等しい。更には、要求を押し通す為にこの様な犯罪行為を国がする様では、この国の行く末が危ぶまれようというもの。可及的速やかにシャアを返してもらいましょう。その上でそれなりの痛手も被って貰います』
アムロは昂然と言い切ると、ナナイへと視線を向けた。
『マザーコンピューターの部屋に連れて行ってください。シャアの居所を突き止めます』
「どう・・・なさるおつもりで?」
『どれだけ隠蔽しても、瞬間移動が出来るわけではないのですから記録が残っているはずです。それをコンピューターを介して見つけ出します』
「・・・・・・ハッキング・・・ですか?」
『相手が違法行為で来たのです。こちらも人命に支障は及ぼさない程度の違法行為は容認されるのでは?』
一同に対してニッコリと笑ったアムロだが、その瞳は笑ってはいなかった。
そして、滲み出てくるプレッシャーがジリジリと一同を息苦しくしていった。

「解りました。統合コンピューター室はこちらになります」
ホルストがアムロを社屋の最重要エリアへと案内した。
                  2011/02/17
作品名:ユースティティア 作家名:まお