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ユースティティア

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「いい加減、色よい返事をいただけませんか」
慇懃無礼な内容が目の前の男から発せられ、シャアは片眉をピクリとさせた。

シャアがリムジンから拉致され、意識を取り戻したのは30分ほど前。
高級なソファーに横たえられてはいたが、手首は後ろ手に皮の手錠で拘束され、両足首も同様。ソファーに座りなおすのも若干の困難を要した。身体の柔軟性を利用して、シャアは後ろ手にされていた手を前に持ってきてみたが、ぴったりと合わされた手に余裕はなかった。
周囲を見回してみると、壁に窓は無く、外の様子をうかがい知る事は出来ない。
襲撃を受けてどれくらいが経過したのだろう。それにここは何処なのかとシャアが考え始めた所に、目の前に立つ男を含めた五人が入室してきたのだった。

「お気がつかれましたか」
最後尾にいた男が、屈強な男達の間を抜けて、シャアの前に進み出た。
長身でやや細身。神経質そうな表情をした30代後半の男は、シャアの前の空いているソファーに腰を下ろした。
背もたれに身体を預け、長い足を優雅に組む。手を胸の前で組み合わせると、唐突に語り出した。
「少々手荒なまねをいたしまして、真に申し訳ございません。ですが、こちらと致しましても、この様な手を用いる事は極力避けたいと考えておりました。しかし、そちら様が当方の要求を一向にお聞き入れくださらない事に急進派を抑える事が難しくなり、斯様な手技となりました。つきましては、早々に快適な生活にお戻りいただく為にも、当方の要求を快諾して頂けませんか」

まるでこちらが拒否する事など頭に無い話し方だ。
依頼の形式をとりながらも、こちらの指示に従えと言っているも同然な内容に、シャアは呆れ果てて返事をする気も起きなかった。

そのまま、互いに一言も発しないまま10分ほどが経過した。
ソファーに座り向かい合う二人はこの状況をさして重圧とは捉えていないが、細身の男の周囲を警護するかのように立つ男達には、苛立ちを募らせる空気となっていたらしい。

「質問に答えんか!」
恫喝するかの様な大声が一人の男から発せられた。と、途端に残りの男達も口火を切る。
「貴様如き庶民がお会いできる方ではないのだぞ」
「依頼をされるだけでもありがたいと思い、快諾するのが筋と言うもの」
「さっさとそのひよこ頭を縱に振らんか!」

今にも飛び掛らんばかりに興奮して喚きたてる男達を、シャアは冷めた目で見回した。その上で、軽く頭を振ると、膝の上に拘束された腕を投げ出して眼瞼を閉じた。

「きっ!きさま〜!!」
血気盛んな一人がシャアの胸倉を掴みかかった。
その動きを利用して、シャアは男の腕を払いのけると、そのまま手錠を利用して男の首を締め上げた。
「こいつっ!!」
残りの男達がシャアに飛びかかろうとしたが、締め上げられている男を盾にされていては手が出せない。締め上げられている男の顔も、うっ血にどす黒くなりだしている。

「諸君。人に物を頼むならそれなりのマナーを守りたまえ。襲撃し拉致拘束しておきながら、依頼を受けろ? 何処の世界にこんな扱いを受けて要求を快諾する愚か者がいるのかね。私はそんな人間を見た事が無い。ああ、人間じゃなければあるか・・・。狗・・・とか?」

鼻先で笑うようなシャアのあざけりの言葉に、男達の怒りのボルテージが急上昇した。
「ぶっ殺してやる!!」
男達が胸元から拳銃を引き出した。

「馬鹿な真似はやめなさい。仲間を見殺しにするのですか? そんな事は私が認めません。拳銃を納めなさい」
一人、ソファーでくつろぐ姿勢を保っていた男が、暴力に走りそうな男達を諌めた。
「しかし、長か・・・」
「余計な口を開かない! 私に二度、同じ事を言わせるのですか?」
幾分低められた声が鎖のように男達の動きを止める。
彼の口角は上げられ、笑顔が形作られているが、それは冷ややかなものだった。
男達は皆、拳銃を胸元に戻していった。
「貴方も、その彼を解放してあげていただけませんか。そのままでは死んでしまいそうです」
「殺した所で、私にとっては痛くも痒くも無いのだがね。まぁ、そんな事をすると妻に嫌われるから、止めるとするか」
シャアはそう言うと男への拘束を解き、その背を仲間の下へと蹴り出した。
倒れる様に帰ってきた仲間を男達は受け取ると、部屋の外へと連れ出して行った。代わりに先程の3倍の男達が室内へと雪崩込んでくる。
そして、シャアの周囲を取り囲んだ。
作品名:ユースティティア 作家名:まお