君が泣かなくなるまで
「中在家は確かにすでに就職先が決まっている。収入もあそこなら十分あるだろう。どうせ福富屋に住み込むことになるのだから、衣食住には困らんしな」
「そうですね。福富屋さんも中在家にきり丸住込みの許可を出してくれたそうです」
「良かったじゃないですか」
「よくないですよ!」
何で?
「…山田先生は、中在家ときり丸が恋仲だってご存じないんですか?」
……ああ、やっぱり仲ってそういう関係を指していたんだな……
「…あんたの言葉を聞くまでは考えたくなかったが…やっぱりそういう仲なんですな?」
「あの二人が交際を始めて、もう半年になりますよ…」
そんなに経つのか!
「きり丸はまだ10歳です!そんな子供を新米忍者の元へ嫁に出すなんて阿呆なマネしたくなかったんですよ!だけど…だけど…中在家が・・・っ」
そこまで言って、土井先生は泣き出してしまった。
本当はきり丸を渡すなどということはしたくなかったはずだ。けれど、中在家ときり丸の言葉から二人の愛情が本物だと感じ取ってしまったのだろう。
そうでなくては、きり丸を家族として大事にしてきたこの男が手放すわけがない。
しかしなぁ、嫁って…
その表現、どうにかならんのかねぇ…
「はいはい、いい大人が泣くんじゃないよ」
「だって…だってぇ~っ…うえええんっ」
作品名:君が泣かなくなるまで 作家名:ヴァルヴォル