【カイハク】NoA
「君達を探してる。あいつら、執念深いから」
どこか楽しげなカイトの声に、ハクは身を震わせた。もしかしたら、彼は自分達を罠にはめて、楽しんでいるのではないかと。今にも、外の化け物を呼び込んで、自分達をなぶり殺すのではないかと。不吉な考えが頭に浮かぶ。
「あ、あいつら、一体何なんだ?」
ラッドの問いに、カイトは肩を竦め、
「君のお仲間だよ。君と同じ人間で、君と同じように迷い込んできた、哀れな犠牲者さ。そこら中に吹き出してた煙、気づいてた? あれが毒なんだ。あれを吸うと、脳がやられて思考止まり、徐々に体が崩れていって、ついにはああなる」
「え? なっ! 何で早く! 俺も煙を!」
「落ち着いて。深呼吸でもしなけりゃ、大丈夫だよ。焦ると、余計吸い込むよ?」
その言葉に、ラッドは慌てて口元を手で塞いだ。
「そこらを漂ってるのは薄まってるから、時間が掛かるんだ。夜明けまでに此処を抜け出せば、十分間に合う」
「そ、そうか。分かった」
「吹き出してるのは濃いからね。もっと早く回るよ。試してみる?」
さらっと言われて、ラッドはぶんぶんと首を横に振る。
ハクは、そろそろとラッドの背中から顔を出し、
「貴方がマスクをしているのは、その為?」
カイトの顔と、手に持ったガスマスクを交互に見た。
「そう。良く分かったね」
「え? 君は肺呼吸なのか?」
ラッドの驚いた声に、カイトは笑って首を振る。
「そこまで精巧じゃないよ。僕はちょっと長居しすぎただけ。やることがあってね」
そう言ってから、悲しげに目を伏せた。
「僕の目は元々、青かったんだ」