【カイハク】NoA
カイトは、床に小石を並べて説明する。
「ここが、君達の車があった場所。今居るのはここね。外への出口は二カ所。君達が入ってきたのはこっちで、さっき閉鎖されてた。まあ、それで侵入者があったって気づいたんだけど。反対側のゲートは錆び付いてるから、そう簡単に閉まらないんだ。急げば、こっちは間に合うと思う」
「だが、奴らに待ち伏せされてたら? 出口が他にないということは、ここに向かうことは簡単に予想出来る」
ラッドの言葉に、カイトは肩を竦めた。
「あいつらに、そんな知能は残ってないよ。大丈夫」
「そうか、それなら」
「と、思う。多分」
「は?」
「まあ、いいじゃん。他に方法はないんだし」
「そもそも、ここは何処なのですか?」
ハクが口を挟むと、カイトは首を傾げる。
「町一つ分の、軍事施設。兵器の開発とか、そんな研究をしてたみたいだね。もっとも、一番力を入れていたのは人体改造みたいだけど。詳しくは、彼に聞いたら?」
視線を向けられ、ラッドが息を飲んだ。
「マスターに?」
「なっ、何を言って、俺は知らな」
「あれ? 知ってる場所じゃないの? さっき、扉のマークを熱心に見てたから」
「い、いや、み、見覚えがあるような気がしたんだが、勘違いみたいだ」
「そう。まあ、こんな場所の関係者なんて、ロクデナシばかりだろうからね」
ラッドが青ざめた顔で俯くのを、ハクはいぶかしげに見つめた。
そんな二人に構わず、カイトは壁に近づくと、付近の瓦礫を探って拳銃を取り出し、ラッドに手渡す。
「はい、あげる。僕が囮になるから、君達はその隙にゲートを出るんだ」
「えっ、カイトはどうするんだ? それに、ノアが」
ラッドの言葉を、カイトは唇に指を当てて遮った。
「そういうの、脱出してから考えてよ。正直、君達は足手まといだから、早くサヨナラしたいんだよね」
そう言われて、ラッドはしょげたように黙り込む。ハクは何も言えずに、ラッドの腕に手を添えた。
「はい、じゃあそろそろ行こうか? あいつらに襲われたら、容赦しないように。銃を撃ったことは?」
「・・・・・・射撃ゲームは、得意だ」
「上出来。当たればいいよ」
カイトは扉に近づくと、二人を促す。ハクはラッドに寄り添いながら、
「・・・・・・でも、元は人間なのに」
「君のご主人があいつらの仲間入りをしたいっていうなら、止めないよ? ご自由にどうぞ」
カイトに返され、ハクは慌ててラッドの背中に隠れた。ラッドは銃の引き金に指をかける。
「・・・・・・今は、自分達が脱出することを考えよう」
「そう。じゃあ、ここから先は静かにね」