【カイハク】NoA
研究所が目指していたのは、自己修復する生体兵器。人のように命を落とさず、アンドロイドのように修復の必要がない、不死の化け物だ。
「あいつら、神にでもなったつもりなんだ。自分達が世界を変えると、本気で信じてた」
連日の投薬、手術、負荷実験に耐えきれず、何人もが命を落とし、秘密裏に処理される。犠牲になったのは、身寄りのない幼子だった。
「化け物さ。運良く生き残っても、もう人には戻れない。作り替えられた体を抱えて、いつ終わりが来るかも分からない。だから、お返しにあいつらも生まれ変わらせてやったんだ。本望だろう?」
ウィルスをばらまいて研究員達を異形へと変貌させ、研究所を閉鎖に追い込んだ。それに飽き足らず、難を逃れた関係者達を執拗に追いかけ、廃墟と化したこの場所に引きずり込み、犠牲者を増やし続けていた。
「探すのは簡単だったよ。研究員は全員、発信機を埋め込まれているから。探し出して近づき、ここに誘い込むのは、なかなか愉快だった」
「一緒にいた、無関係な人も巻き込んで?」
カイトの言葉に、ノアは首を傾げる。
「そう、何人かは悪いことをしたな。でも、すぐに殺してあげたよ。化け物にしたのは、研究員だけた」
「僕のマスターも?」
ひやりとした冷たさを増して、カイトが聞いた。
「僕のマスターも、すぐに殺して『あげた』の? 何の関係もない、たまたま居合わせただけのマスターも」
「君のマスター? さあ、どうだったかな。でも、研究員でないなら、苦しまずに死ねたはずだよ」
ノアはくすくす笑いながら、カイトを上から下まで眺め回す。
「もしかして、敵討ち? 凄いね、そんな忠誠心があるんだ。しかも執念深い・・・・・・あいつらといい勝負だ」
ちらっと窓に視線を向けてから、ラッドは再びカイトへ視線を戻す。
「君の髪と目、本来の色じゃないね? 毒の作用かな。時間は掛かるみたいだけど、まさか機械にも効くとはね」