【カイハク】NoA
ラッドは、笑いさざめく人々をかき分け、一緒に連れてきたハクを探す。
クラインの別荘で開催されたダンスパーティーは盛況で、部屋を移動するのも一苦労だった。
きょろきょろと辺りを見回し、ドレス姿のハクがバーカウンターの側にいるのを見つけたラッドは、そちらに向きを変える。その時、横からやってきた男性に気づかず、肩をぶつけてしまった。
「ああ、失礼しました」
「いえ、こちらこそ」
柔らかな笑顔を向けてきた相手に、ラッドはギョッとして立ち尽くす。
あの時、助けを求めてきた少年の面影が、そこにはあった。
ラッドが声を掛ける前に、相手は人波に紛れてしまった。
呆然と立ち尽くすラッドに気づいたのか、ハクが側にきて声を掛ける。
「マスター、どうかしましたか?」
「え? ああ、いや、な、何でもない」
ラッドは頭を振り、カクテルを煽った。
「飲み過ぎですよ」
「いいじゃないか、今夜はパーティーだよ? 楽しまないと」
「帰りは、私が運転しますから」
「そうかい。じゃあ、俺が酔い潰れても平気だね」
「マスターったら!」