【カイハク】NoA
「こっちへ!」
カイトの誘導に従い、右へ左へと走る。恐らく、化け物達はこちらに気づいているだろう。今は、どちらが早くゲートにたどり着けるかだ。
十分離れたところで、瓦礫の山に二人を押し込むと、カイトはナイフを取り出す。
「二手に分かれよう。このまま真っ直ぐ行けば、ゲートが見える。君達は外へ。僕が、奴らを引きつける」
「でも!」
抗議の声を上げかけたハクを、ラッドが遮る。
「ハク、外に出たら、クラインを頼りなさい。彼は君の力になってくれるだろう。カイト、ハクを頼む。俺のせいで、巻き込んでしまってすまなかった」
「えっ、それって」
「マスター!」
「すまない、最後までワガママなマスターで」
ラッドはそう言って、瓦礫の山を飛び出した。
「決めたんだ! 今度こそ見捨てないと!」
叫びながら、追いかけてくる化け物の群へと向かって走る。その中に、ノアの姿を探しながら。
「マスター! マスター!」
「急いで! ゲートが閉まる!」
ハクがどんなに叫んでも、ラッドもカイトも足を止める様子はなかった。カイトに手を取られ、半ば強引に引き離される。
ハクは目の前が涙でぼやける中、ラッドの無事を祈り続けた。