【カイハク】NoA
「ひっ!」
ラッドは短い悲鳴を上げながらも、ハクを背中に隠す。メリメリと音がして、戸惑う暇もなく車のドアをはぎ取られた。
「ま、待ってくれ! 俺達はただ」
「こんな時間にドライブ?」
相手は呆れたように言って、ガスマスクを外す。褪せた青い髪と赤い瞳が現れた。
「み、道に迷って! 頼む! 助けてくれ!」
「オーケイ、落ち着いて。ほら、よく見て。僕は彼女と同じアンドロイドだ。名前はカイト。君達は?」
その言葉に、ラッドはまじまじとカイトを見た。ハクと同じかそれ以上に精巧な作りをしているが、今目の前にいる相手は、確かにアンドロイドだった。
自分の身近な存在に、ラッドはいくらか落ち着きを取り戻す。
「・・・・・・ラッド。彼女はハク。君は一体」
「初めまして、お二人さん。早速だけど、あいつらが戻ってくる前に隠れたいんだ。良かったらついてきて。襲われたいなら別だけど」
そう言って、カイトは再びマスクを着けると、さっさと歩き出した。ラッドとハクは転がるように車を降りると、慌ててカイトの後を追う。