親友 あとがき
心底驚いている顔を見て、泣きそうになる。
おれの今までの頑張りはほんとにいったい何だったんだ・・
「でっでも、ゾロと一緒に暮らしてるんじゃないのか!?」
「ゾロはたまたま隣のアパートだったから、帰るのが面倒くせぇっつって泊まってくだけだ。ダチなら普通だろ?・・おい、言っとくけど仲良く同じ布団で寝るなんてことありえねぇからな。」
「・・・そ・・そうだったの?」
「そうだったの?じゃねぇよ、勝手に勘違いしやがって!!!
おれはお前の告白ん時からずっと付き合ってると思ってたんだぞ!!」
「えぇえええええ!!!???」
「本気で驚いてんじゃねぇこのクソ野郎!!!」
「ごごごめん!!!!」
「許さねぇ。」
「ごめんサンジごめん!!!」
「キス。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
「おいその長ーい間は何だこら。」
「だだだだって!!!!!キキキ・・キスって!!??」
「キスしたら許してやる。しないなら知らねぇ。」
「・・サンジィ」
「したくないわけ?」
「そんなことはっ!!!!!」
「じゃあほい。」
サンジは布団に丸まったウソップを抱きかかえたまま目を閉じた。
ウソップは目の前で目を閉じたサンジに戸惑った。
今さっき付き合ってるという事実が発覚したばかりなのだ。
まだこれは何かドッキリとかなのではなんていう不安もあったが、
ドッキリでも、なんでも、今しなかったら後悔すると思い、ウソップは覚悟を決めた。
頬にやるには恥ずかし過ぎたので、サンジの胸元に戸惑い気味に手を置いた。
そしてサンジの口元を確認すると、目を閉じた。
緊張で震えている自覚はあったが、止めようがないので仕方ない。
ウソップは少しづつサンジに近づいて行った。
ウソップは確かにサンジに近づいてきていたが、
あまりに少しづつで元々気が短いサンジが目を開けた。
すると懸命にキスしようと頑張っているウソップの顔が目の前にあって、
これはもう自分からいってしまおうかと考える。
だが、こんなに頑張っているのだから、それは止めた方がいいだろうか。
う~んと悩んでいても一向にウソップはサンジに辿り着かない。
だんだんとサンジは可笑しくなってきた。
目を閉じて、必死なウソップは笑いをこらえているサンジには気づかない。
サンジはなおも頑張り続けるウソップに愛しさが込み上げた。
恥ずかしさからか目じりにたまった涙をそっと拭ってやる。
びっくりして目を開けたウソップのおでこにサンジからキスをする。
「お前かわいすぎ。」
「・・へ?」
「しょうがねぇ。
今日から付き合うようなもんだからな、ゆっくりでいい。」
「サンジ・・」
真っ赤な顔でサンジを見つめるウソップの頭を一撫でして、
サンジは立ち上がった。
「そろそろ帰る。]
「えっ!?」
「急に来ちまったしな、とりあえず今日は誤解が解けたから良しとする。
いいか、おれはお前が好きだからな?もう勘違いすんじゃねぇぞ。」
「うっうん・・」
「んじゃな。」
「サンジッッ!!!!!!!」
ドアに手をかけたサンジをウソップは呼び止めた。
本当は帰ってほしくない。
でも、このまま一緒に居ても心臓が持たない。
でも、明日になったら夢にならないだろうか。
だから・・・
「ん?」
ちゅっ――――――――
これで明日、今日が夢だったとしても後悔しない。
夢じゃなかったら照れるけど。
「また明日な。」
「・・おっおう。じゃあな、」
今度こそドアに手をかけ、サンジは部屋を出た。
ウソップはふと振り返るとサンジのカバンがドアのすぐ横に放ってあるのに気付いた。
慌てて鞄に手を伸ばそうとした時、
ドタドタバタンダタン!!!!!!
「サッサンジ君大丈夫!!!???」
物凄い音と母親の大声が聞こえてきた。
鞄を掴み部屋を飛び出して階段の下を覗き見ると、
一番下の段でしりもちをついているサンジが居た。
だが、すぐに立ち上がると母親に頭を下げた。
「だっ大丈夫です。お騒がせしましたっすみません。」
「あら?泊まっていかないの?」
「きょっ今日は失礼します。また改めて、お邪魔します。
おやすみなさいっっ!!!」
体半分が既に外に出てしまいウソップも慌てて階段を駆け下りる。
「サンジ!!!」
降りている途中でサンジと一瞬目があった。
サンジの顔が一気に赤くなって、ウソップもつられて赤くなってしまった。
そして我に返ったのが早かったサンジは帰って行ってしまった。
「サンジ君大丈夫かしら、顔赤かったけど。」
「・・あっ、鞄。」
あんなに動揺するサンジをウソップは初めて見て、
また新しい一面が見れた喜びと、『親友』を実感した喜びでいっぱいになった。
でも、今はあの慌てぶりを思い出して笑った。