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いつき りゅう
いつき りゅう
novelistID. 4366
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Be for  you

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「ほぉう?んじゃなにか?
美人の家庭教師が居て、その家庭教師が手取り足取り腰取りの楽しいお勉強をお前にしてくれると。
一部壊滅的だった成績もちゃんと前より上がって成果が出てる上に、充実した性活までオマケに付いて来て、結構なことじゃないか。
それの何が不満だ」

 この贅沢者と罵倒して、三郎は手元のトレーに残っていたナゲットを一口で放り込んだ。
羨ましがっているという訳でもない様だけれども、苛ついているらしい三郎の表現はいちいちが親父臭い。
頬杖突いてこれみよがしに溜息を零した俺を見やる目ですらどこか冷ややかだ。

「だから、そういうのとは違うんだよ…」

 胸につかえる否定を口から零せば、重苦しい溜息までもが絡んで落ちる。
健全な一男子高校生としては、エロい事に興味がないとは言わない。
でも、俺が言いたい論点はそこじゃない。

「『家庭教師』がそういう事をしてるんじゃなくて。
してくれてるのは『恋人』なんだよ。俺の場合は」

 そう、俺と先生は『恋人同士』。…の、はずだ。
俺の成績の余りの悪さに、流石にこれはと頭を痛めた母さんが雇った家庭教師とその生徒、という立場から始まったこの半年。
週二日の短い時間でしかなくても、何度か教えを受けているうちに知った先生の真摯な姿勢と誠実な人柄は、その聡明さも含め好感を持つには充分な物だと実感した。
 抱いた好意には正直に親しみを持って接して授業も真面目に受けている内に、一ヶ月経つ頃には先生と相対している時の自分の微妙な変化に気づいてしまった。
 そこから二ヶ月間思いがけない方向に変化しつつあった感情に驚いて「男同士だ」とか「年上だ」とか「先生なんだ」とか、色々な問題をぶつけてブレーキをかけようとしても、授業で顔を会わせれば募る思いは加速していくばかりで歯止めが効かず。
もうどうにもならなくて、楽しみにしていたはずの授業にすら身が入らなくなってきた三ヶ月目に、先生が俺を案じて授業の前に少し話をしようかと持ちかけて来たその日その時に。
勢い余って「先生が好きです」と口走ってしまった。
 正直口に出した事に気づいた時は「しまった」と思わなかった訳ではないけれど、俺が告白したその瞬間に先生が浮かべていた表情はただ驚きばかりが強く、拒絶や嫌悪感といった物は一切読み取れなかったから、逆にこれはチャンスだと思い直した。
親しみだとか気の迷いだとか、自分でも二ヶ月もの間悩み続けた言葉なんかで勘違いされるのも誤魔化されるのもゴメンだと、明晰とは到底言い難い俺の頭が必死に思いの丈を言い募る。
 お粗末な言葉選びでどれだけ伝わるのかも分からずに、ただひたすら先生の事が好きだと浴びせるように繰り返すばかりの稚拙な愛情表現を一身に受けた先生は。

「ありがとう」

と一言囁いて、少ない語彙で想いを伝えようとばかり必死になって忙しなく開き続けていた俺の口を。
その唇でやさしくそっと蓋をした。

 俺よりも少し下の位置にある目線は、いつだって俺を見る時には軽く上目遣いがデフォルト。
現役の名門大学生で俺より年上で頭も良くて、絶世のとまでは行かずとも世間一般からすれば十分整った顔立ちの先生に至近距離から見つめられたら、膨れ上がるばかりの恋心を持て余していた俺はそれこそまさに天にも昇る心持ち。
受け入れて貰えた嬉しさとこれからの期待が先に立って大分浮かれてた、それからようよう三ヶ月弱。


 違和感を抱いたのはこの間の事が初めてではなかった。
様子を伺うように触れ合うだけだったキスは次第に深く舌を絡ませ合う物になり。
遠慮がちにやわやわと握るだけだった不慣れな手技も、回数を重ねる内に俺の性感を煽り昂ぶらせるツボを抑えた動きも出来るようになった。
 つい一ヶ月前にあった中間試験では、事前に課せられたハードルを越えるべく死に物狂いで頑張ってその結果、「好きにしていいよ」と気恥ずかしそうに差し出された裸体の脚を割り入って夢中であの身体を掻き抱いた。
先生の方も経験などない初めての行為に身体が悲鳴を上げているのに、それでも懸命に受け止めてくれていて、嬉しさよりも何よりもただ愛おしかった。
奥の深いところまで繋がり合って、どこをどうすれば気持ち良いのか、どうされたいのかとか、お互いの身体で知らないとこなんてどこも無い位に何度も触れ合っているのに。

「なのに、未だに俺…先生の家も知らないって。
…なんかヘンじゃないか?」

 最寄駅ぐらいは雑談話の中で聞いて知っているけれど、近所でよく行く店だとか、大学でどんな事があったのかとか、そういうプライベートな事に関わる部分は一切詳しく語られていない。
 別に会話がない訳じゃない。
俺から話す事に対しては先生も的確に相槌も打つし、ノリに任せたバカ話なんかにも乗ってきて、俺との会話のやりとりにも笑顔で応じて楽しげにしている。
 でも、家庭教師の先生という立場から放れた本来の、大学生の久々知兵助の事は、何も知らないままだ。
それどころか、思い返せば会うのすらも今までと変わらず週二回の家庭教師の授業の時のみ。
休みの日に、自宅でなくともどこか一緒に遊びに行けないかと伺いを立てても、「そのうちな」と緩やかな微笑みで流されて話はそこで終わってしまう。
 ご褒美にと決めた行為は許す癖に、その時定められた領分を越えようとするとすかさず制止される。
こういうもんなのか?
『恋人』という言葉にこれまで抱いていたイメージと現実とのギャップの差が大きすぎて、俺の頭に鬱々とした気持ちが重く圧し掛かってくる。

「キスだけで足りるもんなのか?キスしたらしたでさ、もっとこう…ムラムラっと『したい』とか『やりたい』とか思わないもんなのか?なぁ?」

 いつも授業の後には母さんが作っておいてくれた夕飯をリビングで一緒に食べるけど、それが終わったら長居もせずに帰ってしまう。
「女の子じゃないんだから」と、すげなく断る先生を駅まで送って行くのにも何かしらの理由が必要で。
「それじゃまた」のたった一言で余韻も未練も残さずに帰宅する先生の背中を改札越しに見送っている俺の胸の内には、じんわりとやるせないような寂しさが湧き上ってくる。
 好きなんだ、それは今でも変わらない。
でも、俺のこの気持ちとは何かが釣り合っていない、そんな気がしてならなかった。
沈む気持ちに釣られるように脱力していった腕では支えきれなくなって、頬杖すら崩してテーブルの上に額を乗せてしまった俺が口を閉ざしてしまうと、さっきまでは散々遠慮なく扱き下ろしていた三郎もまた、その口に重石がかかったように言葉を控えてしまった。

「とりあえず、キスだけで足りるかどうかって質問にだけ答えるとだな…人に寄るとしか言えんな」

 私はお前の先生をよく知らないしな、とあくまで慎重に答えた三郎の呟きに、思わず「俺だって知らねえよ」と返しそうになったが、あまりにもそれは情けない気がして咄嗟にぎゅっと唇を噛み締めて堪えた。
 
作品名:Be for  you 作家名:いつき りゅう