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Wizard//Magica Infinity −1−

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「ハっっルトせんぱ~いっ!『部活』の時間ですよ~っ!!」
「あ~うるさい。わかってる」
「瞬平はいつも元気ね」

最後の授業が終わった瞬間、数分も経たないうちに元気よく瞬平が俺たちの元へ現れた。頼む。めんどくさい授業を強制的に受けられて苛立っているんだ。頼むからお前のその超ハイテンション止めてくれ。

「お前はなんでいつも機嫌が良いんだ?その元気俺にも分けてくれよ」
「ははっ!ハルト先輩馬鹿なんですねっ!元気なんて物理的に分けられるわけないじゃありませんかっ!」
「お前喧嘩売っているのか!?」

瞬平はとにかく落ち着きがない。本当に。
そしてトラブルメーカー。しかも何故か瞬平が起こしたトラブルが全て俺の元に降り注がれる。俺と瞬平には一体どのような因果が存在するのだろうか…謎だ。

「ほらっ!そんな怖い顔しないで早く行きましょうよっ!」
「お前が原因なんだよ!っておい、引っ張るなって」
「ほらほら~コヨミさんもはやく~っ!」
「ま、待って瞬平」

そんな瞬平でも俺たちの中ではムードメーカーの役割も果たしている。俺とコヨミの世界が広がったのは瞬平のお陰でもあるのだ。
だから瞬平のことは別に嫌いじゃない。俺たちの輪には必要不可欠な存在だ。

俺たちは瞬平の手に引っ張られ学校の3階奥へと連れていかれる。
廊下の一番奥に音楽室、さらにその片隅には現在使われていない部屋がある。音楽準備室だ。そこが俺たちの部活、「探検部」の部室なのだ。

「凛子さん!二人を連れてきました~!」

「よくやった、瞬平くん!さぁ今日も探検部の部活動開始よ!」

と、音楽準備室の立派な椅子に足を組んで座っている凛子ちゃんの掛け声と共に今日の部活動がはじまる。

まぁ部活動と言ってももともとこの学校には部活なんて存在しない。俺たちが勝手に部活動と称して好きに集まっているだけだ。故に顧問は必要無い。…というか、部活といってもそれらしい活動はしていない。その時に凛子ちゃんが思いついたことを実行しているだけだ。ただ、色々な事を考え実行する凛子ちゃんだが一つだけ誰にも譲らない趣味がある。それが「探検」だ。

「さぁて!今日もどこかへ探検しに行くわよ!」
「探検しに行くわよ!っていうけどさ、もうこの面影村は隅々探検しつくしちゃったじゃない」
「どこに行こうと言うの?凛子」

「ふふっ甘いわね二人とも…ショートケーキにカスタードクリームと砂糖とチョコレートをトッピングするより甘いわよ!」
「うわっ本当に甘そうですね…胸焼けしそうだ…でも美味しそう!」
「お~い、話が変わってきてるよ~」

「あ~そう考えてきたら無性にケーキ食べたくなってきたわ、俊平くんケーキ買ってきて」
「おいおい、瞬平が可哀想だろ」
「はい、ただいまっ!!」
「行くんかい」

瞬平は凛子ちゃんに何故か敬礼し元気よく部室から出て行ってしまった…。

「…おほん、話しがずれちゃったわね」
「凛子が原因よ」
「さて、本題に戻すわ!二人共、学校裏の山道をず~っとを歩いていった先にダムがあるのは知っている?」
「え、そうなの?知らなかった」
「やっぱりね!私達は今日、そのダムを探検しに行こうと思います!」

「…ちょっと待て。そのダムに行って何をするつもりだ?」

「何って…何もしないわよ?」
「まさか、行って終わり?」
「そうだけど、何?」
「はぁ…なぁ凛子ちゃん。前々から思っていたんだけどさ。何の目的も無く毎回冒険してるけど、それが一体何になるの?何かを得られるって訳じゃないと思うし。凛子ちゃんは一体何がしたいの?」
「…そうねぇ」

この時、始めて凛子ちゃんが真剣な表情になり席を立つ。
そして窓の外を見つめた。

「ねぇハルトくん。私達はいつまでこうして遊んでいられると思う?」
「それは…やっぱり、卒業するまでじゃない?」

凛子ちゃんは俺たちより二つ上の3年生だ。つまり、俺たちより先に卒業してしまうことになる。

「考えてみなよハルトくん。私達はいずれこの学校を卒業する。そうすれば私達は生きるために職を探し仕事をしなければならない。もちろん、こうして皆で集まって何かをすることが出来なくなってしまう」

そうだ。
この先、俺たちがずっと一緒にいられるという保証はない。少なくとも、あともう少しで凛子ちゃんは俺たちより先に卒業してしまうんだ。

「何も目的が無く、ただ仕事に明け暮れる毎日。戻ろうと思っても、もう戻れないあの青春の日々。なら今私達には何ができるのか…そこで私は考えた」

「凛子ちゃん…」

「私達はこの一時を…この青春の一時を楽しむため、この面影村を皆で探検しようと考えたの!」

「…ん…あれ?」
「途中まですごく良い話だったのに。途中から訳がわからなくなったわ」
「ごめん凛子ちゃん、もう一回説明して」

「私達は、この一瞬の青春を楽しむため、この面影村を皆で探検しようと考えた!」

「……ごめん凛子ちゃん。納得してあげたいんだけど、最後の説明だけどう頑張っても納得できないんだ」
「えぇっなんで!?」
「だから…なんで探検なんだよ!答えになってないよ!」

俺は何か不思議そうに戸惑う凛子ちゃんに盛大な突っ込みを入れる。
コヨミも俺と同意見のようだ。全く話の糸がつかめない。

「ま、ようするに何でも良いってことよ!いずれハルトくんにもわかる時が来るわ」
「結局何でも良いんだ…ま、いいよ。なら早速行こうか、その未開拓地のダムがある場所へさ」
「ハルトも乗り気なのね」
「まぁぐだぐだ考えても仕方ないからね」

凛子ちゃんがの説明は相変わらず訳がわからないけど、何かが俺の中に突き刺さった。
なんだろうか…凛子ちゃんはあえて言葉にはしなかったけど、今の説明で何か大切な事を訴えかけていたのかもしれない。
きっと、凛子ちゃんと一緒に行動していればその答えもわかるはずだ。

考えるより行動。

今日も凛子ちゃんの思いつきに振り回されてみよう。

−ズドドドっ…ガラン!−
「凛子さんっ!ショートケーキ買ってきましたぁ!!」
「本当に買ってきたんかい!しかも早いな!」
「駄目!今は無性にチーズケーキが食べたいわ!!出来れば手作りでっ!!」
「はいっ!2時間ほど時間を下さいっ!!」
「どれだけ万能なんだよお前!!」

作品名:Wizard//Magica Infinity −1− 作家名:a-o-w