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月を測る

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執務室の扉を開けるとプロイセンはちょうど軍帽を下ろしていた手を一瞬止めて
舌打ちでもしそうな顔をした。
「閉じている扉はノックしてから開けろと教えなかったか?」
「上官にはそれが誰であれ先に敬礼しろと教わった」
「上官?ああ…お前か。そんな事教えた覚えはねぇなぁ」
「貴方が教鞭をとった参謀学校も士官学校も陸軍大学でもどこでも同じだ」
上の階級の者には敬礼する、軍人ならなと表情を変えずにドイツは繰り返した。
髪を梳いていたプロイセンもすぅっと表情を消して右手をぴっと見惚れるような
動きで額に沿わせた。
目だけは忌々しいという風に斜に構えている気がしたので、口を開かないままド
イツは大きな右掌で不意にその両目を覆った。
そこまではプロイセンも視界に捉えており、何も言わず動かなかった。しかし次
にドイツが視界を封じたまま、ぶつけるように口唇を合わせてくると咄嗟に目前
の障害物を取り払おうと腕を上げた。
「ルッ…っ」
「…黙ってくれ」
「んぅっ!」
ドイツの手を外そうとするのを押さえつけながら無理やり舌を捻じ込ませるうち
に、いつのまにかもみ合うかたちになり、気が付けばプロイセンは執務机に浅く
乗り上げていた。
「兄さん……」
やがてふっと息をつき、ほんの紙一枚分だけ口唇の距離をとって吐息で囁いたと
たん、ガツンと脳髄を揺さぶる衝撃が右のこめかみに走り、ついで皮膚がかっと
熱を持った。
「……っ」
堪えきれずによろめき、無意識に右手をこめかみにあてる。
今までのもがく様な仕草は演技だったのかと思うほど正確に見えない相手に対し
て掌底をあてたプロイセンは、しかし全くの冷めた顔で逃れるでもなく、ただや
はり薄く嫌悪の染み渡る目をたった今無遠慮に殴りつけた弟へ向けていた。

「兄さん…これぐらい今更だろう」
先の大戦で初めて身体を重ねて以来、兄弟の禁忌は積み重なり続けている。
「お前が兄と呼ぶのならさきに兄として問い質したい事がある」
その先の問答を端から期待していない、平坦な口調でプロイセンが示す"事項"が
何かなどドイツには分かり切っていた。そしてもはやその事に口出しすべき道理
を、何よりもプロイセン自身の倫理観念によって彼は持っていないということも。

作品名:月を測る 作家名:_楠_@APH