スターサインプリキュア☆
「落ち着きましたか…?フィラメント様…。」
「……私は…何を…」
「嫌な思い出でも思い出してたんじゃないんですか…?」
「…そうか…。バルジ…」
「は、はい。」
「お嬢様を元に戻せ…出来るか?」
「…。」
「お前もお嬢様も…無事に戻って来るのだ。そうすればお前の処分は下さない…だから…何も捨てずにそのままのお前達でまた…ここに帰って来るのだ…。」
「フィラメント様…すみません…それは約束出来ません…。」
「な…」
「変わっていくメシエを見て…分からなくなってきたんです…俺達がやってきた事の意味が…。」
「…うな…」
「ブラック様の目指す世界になったところで感情も全て失ってただ生きるだけならそれって…」
「言うな…」
「それだったら俺達が人間界にしてきたことって何なんですか…!?結局それは自分自身を苦…」
「言うなぁぁぁぁぁああ!」
バサッ―――
フィラメントは散らばった資料をバルジに投げつける。
「…っ。」
「お前はもういい。私がお嬢様を助ける。」
フィラメントは立ち上がって部屋を出ようとする。しかし、バルジはフィラメントの腕を力強く掴んだ。
「メシエは…お嬢様は俺が助けます…!」
「ダメだ。」
「約束…したんです。」
「何…?」
「バルジ…あなたに頼みがあるの。私の、最後の頼みが。」
「え……な、何だよ…。最後とか縁起が悪いだろ…?」
「あたしはずっと生きてるかもしれない、肉体は…ね。でもあたしの感情とか想いとか中身の部分は間もなく消えてしまう。」
「メシエ……」
「お父様の力を完全に受け入れたら…その力でプリキュアを倒したって嬉しくもないし気持ち良くもない。何も感じなくなるのってどんな風になるのか…怖い。でもそれがあたしの運命だと言うのなら文句は言わないわ。お父様に従うしかあたしの道はないんだから。でも…プリキュアを倒してあいつらの世界をお父様のものにして全てが終わっても何も感じないまま生きてるのは嫌なの。」
「何が…言いたいんだ…?」
「もし、全てが終わったらバルジ…あんたの手であたしを消して…終わらせて欲しい。」
「は…!?ふざ…」
「ふざけてないわ。」
「…っ」
「あたしの役目が終わったらあたしにはもう利用価値はないの。お父様だってあたしより絶対…お父様が目指す世界が出来たらそっちの喜びの方が大きいはず。何も感じないままただ暗闇の中でブラックストーンかじりなんてごめんだわ。」
「…させるかよ。」
「え?」
「俺の手で?全てを終わらせてくれって?出来る訳ねぇだろ!!」
「バルジ…でも…」
「でもじゃねぇ!!!」
「…。」
「そんな事しなくてもお前の事は…俺が助けてやる…何も感じなくなったらひっぱたいてでも感じる事を思い出させてやる、全てを忘れたら殴ってでも記憶を取り戻させてやる。だから…終わらせろなんて…言うな…。必ず…助けてやるから…。」
「無理…よ。」
「そうだな…俺はどうせ下っ端だ。力づくではどうにもなんねぇかもしれねぇ…でも…でも…俺を信じろ…!メシエ!」
「…っ!バルジ……分かった。助けられなかったら…あたしが…あんたを消してやるから…覚えてな!」
「ああ。その時は一瞬で頼むぞ、お嬢様。」
「ふん、今までの態度から全てひっくるめて最悪だから痛みで泣き叫びながらの最期にしてやるわ。」
「ちょ、勘弁しろって!」
『アハハハハハ…!』
「と…とにかく約束したんです、メシエと。」
「偉そうに。離せ。」
「あっ…」
フィラメントはバルジの手を強引に振り払いその場を去っていった。
「メシエ…待ってろよ…。」
作品名:スターサインプリキュア☆ 作家名:☆Milky☆