スターサインプリキュア☆
「見て…私たちの王国が…」ハルが外を眺めながら悲しそうな顔で言う。
「木が…枯れている。草も茶色くなってるし、何だか国から色が消えてしまったみたいだわ。」
ピーコも同じく外を眺めて悲しげに言う。
「あっ!!さっき取った石が…」ロタがさっき俺と取り合いをした石を見つめている。
「…!お、おい。その石、さっきまで透明で輝いていただろ?それじゃただの石ころじゃんか。」
綺麗な水晶のようだった石、だけど今ロタが持っているその石はただの石ころのようだった。
「おい、別の石と間違えてるんじゃないのか?」
「そんなことないよ。これは間違いなくさっきの綺麗な石だ。ボクも…信じられないけど。」
嘘ではないみたいだ。俺も外を見てみる、すると、先程までとは全く違う殺風景が広がっていた。
川が…干上がってしまっている。
あの川はさっき石を見つけた川だ。冷たくて気持ちいい水が流れていたのに、水たまりすら見当たらない。少し遠くに俺たちが毎日のように遊んでいる広場が見える。でも、草でフカフカだったあの広場は土がむき出しになっていて、以前の広場とは比べられないほどひどくなっている。
「ボク…水がないと生きれないよ、どうすればいいの、お父さん。」ロタが目に涙を浮かべている。
「大丈夫だ、何かあった時の為に水は貯蓄してある、それにお前が今から行くであろう地球には水がたくさんあるのだ。心配はするな。」ロタの父さんのスアロさんも昔地球へ行ったことがあるんだっけな。
どんな星なんだろう。地球、人間、プリキュア。学校ではもちろん習ったけど、実際はよく分からない。
地球はこの星よりも大きくて、青くて。
人間は俺らなんかよりもはるかに大きくて。
プリキュアはその人間の中でもすごく優秀で勇気があって、とりあえずすごい伝説の戦士だという事を聞いた。
今、自分が住む国がこんな風に廃れてしまったままというのを黙って見ているわけにはいかない。
「ハル、ピーコ、ロタ。地球へ、行こうぜ。俺たち自身のためもそうかもしんないけど、この国のみんなのためにも。俺たちしか出来ないんならもう行くっきゃないだろ。」
「そうね。私のお母さんは地球に、人間にすごくお世話になったっていつもそう話してくれてた。私もちょっぴり…行ってみたいかな。」
「私のお母さんも。そう言ってた。私がもし、少しでもこの国に役に立つというのなら、やってみたいわ。」
「ボ…ボクは…怖いよ。でも…う、うーん。やっぱり怖いよ。」
「ロタ、お前は俺が無理矢理連れていくから心配ねえよ。」
「えぇっ。そ、そんな困る…」
「あったぞみんな!スターウオッチだ!」
父さんが帰ってきた。ロタが何かぶつぶつ呟いているがあいつはいつもあんなのだから放っておこう。
「スターウオッチ?何だそれ?」初めて聞く。
「少し改良を加えていたからな、遅くなってしまった。これは選ばれし人間がプリキュアになるための道具だ。お前にはこれを預ける。」オレンジ色のバンドの腕時計だ。
時計の部分は懐中時計っぽくなっていて蓋には星が描いてあり、横のボタンを押すと蓋が開いて時計が見えるようになっているようだ。
「これでプリキュアになれるのか?ただの時計だぞ。これと言って…」
うん、特に何の力もない時計にしか見えない。
「大丈夫だ。それをプリキュアに渡せばきっと使いこなしてくれるであろう。そして今細工をしたのはお前たちが地球に飛んだ時に、プリキュアの元へ自然と導いてくれる星の力を込めておいた。もう20年も前の話だからな、力も弱まっておってな。これでもう大丈夫だ。さぁ、ハルちゃんも、ピーコちゃんも、ロタ君も。受け取りなさい。」
ハルは黄色、ピーコは緑、ロタは青いバンドの腕時計をそれぞれ受け取った。
「ありがとうございます。」
「さぁ、もうゆっくりしている場合ではない、これから早急に準備をする。ついてきなさい、説明出来ることは説明し、渡せるものは渡しておこう。」
「おう、行くぜみんな。」
「ええ。」
「ま、待ってよぉ。」
絶対に、俺たちの国をブラックから取り戻してやる!
作品名:スターサインプリキュア☆ 作家名:☆Milky☆