自作小説キャラが戦闘中〜その壱〜
(ノエル:ちゃっちゃかみんなを倒せば、早く帰れるし願い事も叶えてもらえるのよね。ならボールを見つけて攻めていかないと損だわ。はぁ、ボール見つからないかしら……。)
商店街に連なる暖簾を見ながら二人のプレイヤーはため息をつく。
しかしその理由は全くもって逆だ。保守的な真里亜と攻撃的なノエル。今後の展開に期待が高まる。
【エリア:川付近】
(政宗:ん……?あの箱何だろう……?)
一人川沿いの道を散策していた政宗が、何かを見つけたようだ。
橋を渡っている時、木々が目にはいるこの場所に似合わぬ赤いBOX。
政宗はそれを発見し、不思議そうに首を傾げながら近寄る。
怪しいとは思っているだろうが、とくに仕掛けはない。
(政宗:あっ、開いた……。これ、もしかしてボール?)
《政宗、ボール獲得。残るバトルボールは九つ》
(政宗:これを皆に当てなきゃいけないんだ…。ここまで来たら、頑張るしかないよね。真希も来てないみたいだし、一人で……)
政宗がボールをGETしたという情報は、周りには渡らない。
つまり、政宗がボールを持ってることを皆は知らないのだ。
この時点では、政宗はとても有利である。
【エリア:住居内】
建物が密接するこのエリアで、早くも身を隠すプレイヤーがいた。
それは……
氷椏「無理だよ……運動とか得意じゃないし……」
早くも絶望感マックスの氷椏だ。
氷椏はボールを探しにいくのを諦め、長屋に身を隠しプレイヤーをやりすごす作戦のようだ。因みに彼女の武器は幟杏と共同の為、じゃんけんで持ち主決めてもらった。勝ったのは幟杏だったので、氷椏は非武装の武器の代わりに盾とバックシールドを装備している。
(氷椏:バックシールドもあるし、ここに隠れてれば当てられても痛くないよね……)
ここにきて痛みの心配をする氷椏。
これから先が心配だ……。
【エリア:広場】
(ケイン:はやく誰かボール取らねぇかなぁー。ここは一丁霧雨ちゃんにカッコいいとこ見せるぜ!打倒璢夷っ!!)
霧雨にいいところを見せたいようだ。その為か敢えてボールをとりにいくことはせず、見晴らしのいいこの広場で正々堂々迎え撃ち、返り討ちにさせる作戦か。果たしてうまくいくのか?
【エリア:川沿い】
千佳「ん!?あの箱がもしかして?………あー、もう空になってるー。誰か取ったんだぁ。悔しい!」
先ほど政宗がボールをGETしたBOXを見つけた千佳。
めげずに次のBOXを探す。
【エリア:商店街】
(真琴:建物いっぱいあるから、これ隠れるのに便利そうだよなー。けど見つかった瞬間逃げれなそう)
商店街エリアを歩く真琴。その手にボールはない。
丁度角を曲がろうとしたときに、真里亜と遭遇。
真琴「あ、真里亜!どう?ボール見つかった?」
真里亜「まだ……そっちは?」
互いに情報を交換する。しかし油断は禁物。いくら兄妹とはいえ今は敵同士だ。
二人ともボールがないとわかると、それぞれ逆の方角にボールを探しに向かった。
【エリア:林】
静「やってらんねー!ボールは見つかんねぇし、誰とも遭遇しねーし……!」
戦いたくて、うずうずしている男。
暇つぶしにか、賞金と願いを何に使うかを考え始めたようだ。
静「とりあえず賞金はゲームにつぎ込んで……願い事は紫綺になんか恥ずかしいことさせてやろっと。クスクス。」
まわりからみたら、ただの不審者だ。
静「まずはボール欲しいよなー……ん?あれ箱だよな。こんなとこになんであんだ?」
木々の隙間に赤いBOXだ。
《静、ボール獲得残るバトルボールは八つ》
静「よっしゃぁぁぁ!ガンガンいくか!よし、山下ろう山!人が居そうな城にでも向かうか!近いし。」
どうやら他のプレイヤーを撃破すべく、城に下りるようだ。
【エリア:城内】
一方、静が向かった先の城にはボールを探すプレイヤーの姿が。
璢夷「中々見つからないな…。」
先ほど城付近にいた璢夷と、
紫綺「だね」
先程話題に上がった紫綺だ。お互いまだボールを持っていないため、手を組んだ様子。既にゲーム開始から七分が経過。そろそろバトルボールが欲しいところだ。
紫綺「この辺とかありそうじゃ……あ、あった!」
城の建物内に飾られるように置かれたBOXを発見。
璢夷「そうか。ならこれで同盟は解除になるな」
紫綺「丁度二つあるし、一個あげるよ。その代わり、今はお互い攻撃しないってことで」
璢夷「分かった。約束しよう」
利害が一致したようだ。
璢夷は紫綺からバトルボールを一個受け取った。
《紫綺、璢夷共にボール獲得。残るバトルボールは六つ》
璢夷「では俺はあそこの入り口から出ることにする。紫綺はどうするんだ?」
紫綺「じゃあ逆の入り口から出るよ。じゃあね」
お互い約束を信じ背を向け、それぞれの入り口から城を出る。
そして、璢夷が出た側の入り口に接近する影……そう、静だ。
(静:あ、璢夷がいんな。さてどうする?奇襲をかけるか?でもあいつもボール持ってるみたいだしな……やりあうのは得策じゃない。一度隠れるか)
どうやら戦わないらしい。
静は城が見える範囲で草むらに隠れた。
一方璢夷は静には気づいていないようだ。そこから川沿いに向かって歩き出す。
(静:あれ?もしかして俺、気づかれてない?じゃああいつ消すチャンスじゃんか。あいつ強そうだし、摘みとれるなら摘みとっておきたいよな)
気づかれていないことをいいことに、璢夷に接近する静。少しずつ距離を縮めていく。しかし。砂利を踏む音で璢夷が振り向き気づかれてしまった。
静は璢夷の方向を見たままバックを開始。しかし璢夷はその場に立ったままだ。
(璢夷:何で下がって行くんだ……?)
恐れられていることに気づいていない。
璢夷は元の予定通り川沿いへ進み、静は草むらに戻った。
様子見だ。
静「運がいいんだか悪いんだか。」
【エリア:住居付近】
幟杏「はー、もう意味わかんなーい。ボール投げんの苦手なんだけどーっ。
氷椏はどこいったぁああ」
氷椏を探しに行く幟杏。その理由は…。
幟杏「あいつも絶対投げんの苦手だろうし、せめて盾になってもらわなきゃ」
そういう事らしい。
(氷椏:……!)
どうやら氷椏は幟杏に気づいたようだ。しかし幟杏は気づいていない。
幟杏はそのまま氷椏のいる建物を通り過ぎていった。見つからなかった事にほっと一息つく氷椏。
(氷椏:……幟杏も今は敵だもんね…。油断は出来ないよ)
【エリア:商店街付近】
セイラ「ボールがないと何にも出来ないね。」
聖夜「そうだね。はやく見つけないと。」
カップルが肩を並べて歩いている。
その二人を店の中から覗いているのは、ノエルだ。
ノエル「げっ、セイラはともかくなんで聖夜までいるのよ…!」
二人がいて出るに、出れない。
(ノエル:仕方ない。建物内で休んでようかしら。何かあるかもしれないし。ボールの入ったBOXと、紅茶があれば良いんだけど。)
紅茶なんて洋風なものは……ない。
(ノエル:あーもう喉が乾いてきたわ……何か飲み物はっと…。)
店内を物色するノエル。
どうやら水筒を発見したようだ。
作品名:自作小説キャラが戦闘中〜その壱〜 作家名:璢夷