Wizard//Magica Infinity −2−
「超展開っ!!」
俺は予言日記をおもいきり投げ捨てた。
…というか、もう日記じゃない。色々と酷い小説のようなものだった。
「あら、ハルトくん。私が書いた予言日記見たの?」
「っ…凛子ちゃん!」
いつの間にか凛子ちゃんがこの教室に帰ってきていた。
俺は気付かないうちにこの日記…いや小説を読み老けていたらしい…。
「もうダメじゃない勝手に人のを読んだら」
「てかこれ日記じゃない!しかも文書レベルが色々と酷過ぎ!!設定を完全無視してるし!ジャンルが安定してないし!何?この小説はアドベンチャーなの?SFなの?恋愛物なの!?」
「そ、そこまで言われると色々とくじけそうになるわ…それでも頑張ったのよ?酷評するときはちゃんと相手の気持ちになって考えてね?」
「新人の小説家かよっ!」
あぁ…駄目だ。
俺の周りにはまともに日記が書ける人物はいないのか?
俊平の予言日記は色々と気持ち悪いし、凛子ちゃんのは既に日記じゃない。
…となると、消去法で出てくるのはたった一人。
「もう良いよ…ふぅ。コヨミの日記を参考にするから」
「ま、肩の力を抜いてゆる~く書いてみなさぁ~い」
「凛子ちゃんはゆるゆるすぎだよ…」
・・・
「お~い、コヨミ~」
コヨミは普段俺たちが部活で使っている音楽準備室で日記の作成作業に入っていた。俺は一階の自販機でコヨミが好きそうな缶ジュースを買い、音楽準備室へと入った。
「…あれ、いないのか…」
さっきの凛子ちゃんと同じパターンだ。音楽準備室には誰も居ない。コヨミは気分転換でどこかへと行ってしまったようだ。
だが、机の上にまたポツンと予言日記が置かれている。間違い無くコヨミのものだろう。
「コヨミ~居ないのか~?…居ないなら~…」
…と、コヨミの予言日記に手を伸ばす。
が…なんだろうか…。
「…うっ…」
理由は特にない。
特にないのだが、何か見てはいけない気がした。
「…は、ははっ…馬鹿だな俺。別にコヨミのなんて…良いだろ…」
頭で思っていても、身体はまた違う。
あからさまに拒絶反応が起きている。
なんだ…やたらと心拍数が高くなる…冷や汗をかきはじめてしまう。
まるで、これを見てしまうと何もかもが変わってしまうような…そんな気がした。
「っ…あぁもう!」
俺は満を持してコヨミの予言日記を手に取り表紙を開いた。
だが、内容は至って普通だった。
6月13日(木) 天気 曇りのち晴れ
まだ夏前だというのにとても暑い。地球温暖化が進んでいるのかな?
今日は探検部の皆でタイムカプセルを埋めることとなった。実際に埋めるのは一週間後みたい。この日記はタイムカプセルの中に入れる予言日記というものらしい。
だからこれからこの日記に書かれる事は全て私の想像だ。未来の私、勘違いしないでね?
「うん、普通だな…」
6月15日(土) 天気 快晴
今日も暑い。いつになったら涼しい季節になるのだろうか?私は暑いのが嫌い。早く夏が過ぎてくれないかな?
一週間も今日でほぼおしまい。明日は学校が休みだ。明日は何をしようかな?
ハルトと何処かへいこうかな?いや、ハルトだけじゃなくて皆連れて…楽しい事したいな。
けど、もう無理やり外に連れてかれるのは嫌だな。今日は嫌な予感がする。
出来れば室内で色々な事がしたい。
「相変わらずコヨミらしい内容だな…」
コヨミに悪いと思いながら俺は読み老けていく。内容は極平凡。予言といいながらしっかりとした内容だ。
俺はパラパラとページに目を通しながら日にちを進めていく。
だけど、俺はその時点で止めておけば良かった。
この日記が書き始めてから一週間後に値する日。
6月20日。俺はその日記の内容に目が止まってしまった。
・・・
6月20日(木) 天気 晴れのち雨
今日、いよいよ探検部のタイムカプセルが埋められる日だ。
このタイムカプセルはいつ掘り出されるのだろう?今からでもとっても楽しみ。
だけど、今日はそれとは別に特別な日でもある。
ハルトが全てを受け入れ、決断をする日でもあるんだ。
ハルトは、真実を知った時、絶望してしまうのかな?
でも、ハルトは強い。
きっと大丈夫だよね。
私は知っている。ハルトは昔と比べて十分強くなった。
きっとこれから先も大丈夫−−−
・・・
「な、なんだ…これ…」
このページだけ、何か普通とは違う…そう、とても不思議な違和感を感じた。
俺はゆっくりと予言日記を閉じ、元と同じように日記を机に置く。
今でも心臓が高鳴っている…。
「俺が…決断?」
一週間後…タイムカプセルを埋める日。
コヨミは何を思ってこんな内容を書いたのだろうか。
「見なきゃ…良かったかもな…」
作品名:Wizard//Magica Infinity −2− 作家名:a-o-w