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Wizard//Magica Infinity −3−

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−−−俺は、4歳の頃におっちゃんに引き取られた。
もう昔の記憶だ。父親と母親の顔は覚えていない。

俺が物心を着く前、両親は何かトラブルがあり、おっちゃんの店に預けられた。だが、再び俺の前に親は姿を現すことはなかった。


俺は、捨てられたんだ。


自覚するのに時間はそれほど必要なかった。
周りの友達を見て、俺に足りないものを知った。両親からの愛だ。
公園で友達と遊んでいて、夕暮れになると必ず母親が迎えにくる。
だが、俺の元には誰もこない。
おっちゃんも店の業務があるからあまり無理はできなかった。

決まって、公園に残るのは俺一人。

次第に、俺は生気を無くしていった。
家に帰っても店に売れ残った玩具の箱を開けて一人で遊ぶだけ。
それから更に一人遊びが増えていった。
周りを拒絶し、一人になるのが好きになった。

学年が上がるに連れて俺は孤立していった。

朝、太陽が出たと同時に起きておっちゃんと二人で朝食を取る。
学校に登校して授業を受けて休み時間はじっと席に座っている。
給食の時間は皆が席を合わせて食べているのに対し俺は窓際に座って黙々と食べる。
帰りのHRが終わったと同時にランドセルを背負って下校する。
家に着くと部屋で店から売れ残りの玩具を手に取り一人で遊ぶ。
夜、おっちゃんと二人で夕食を取る。
そして風呂に入って寝る。


そんな生活がずっと続いた。



これが、俺の人生なのか。

俺がこれからも歩まなければいけない日常なのか。


親から捨てられ、周りの友達が妬ましいと思い、自分一人が絶望して生きていくこの日常が、当たり前になっていくのか。






俺は…嫌だ。






とある日。学校が休みの日だった。
そんな生活が嫌になった俺はランドセルにお菓子をありったけ詰めてこの店から出ていく事に決めた。
けど、小学1年生の発想には限界がある。
家出といっても、結局自分が知っている場所にしか行き先は無い。
着いた先は、以前遊んだことのあった公園。

その公園にあった土管の中で俺は体育座りをし、次第に自分の孤独が身に染み始めた。
がむしゃらに泣いた。
声が枯れる限界まで泣いた。

辛かった。


全て、消えてしまえば良いとまで思った。


すると、次第に天気が悪くなり始め、雨が降り始めた。
雨は次第に強くなり、音をたてるほど強くなった。
運悪く、その日は洪水警報まで出ていた。
雷が鳴り始め、その場に居ることが怖くなった俺は公園から逃げ、がむしゃらに森の中へと入っていった。

地面が雨に濡れて靴が泥だらけになり、雨に打たれすぎた為に体力が無くなっていく。
次第に目が霞み気を失いそうになった。



いや、このままで良い。



このまま目をつぶってしまえば、どれだけ楽になるだろうか。



このまま、寝てしまおうか…そう考え始めた。



そして限界まで達し、俺は気を失った……。




だがその時、





俺に…





俺に一つの小さな手が差し伸べられた。









気がついた時、俺は公園の土管の中で横になりながら寝ていた。
服は泥だらけになった筈だが、店から出てきた時と同じ状態だ。

外を覗いてみると快晴になっている。しかし地面には多数の水たまりがある。

俺は土管から出た。

すると…目の前にこの村では見慣れない同い年ぐらいの少女が立っていた。



−君は…誰?−

−私はコヨミ。あなたは?−

−僕は…ハルト。操真ハルト−

−ハルトは何故、その中にいたの?−

−…一人になりたかったから−

−寂しくないの?−

−寂しいよ…でも…僕の周りには誰も居ないんだ−

−だったら、私が傍に居てあげる−

−え?−

−私がハルトの傍に居続ける−



それが、俺とコヨミの始めての出逢いだった。






コヨミは店のすぐ近くの家に引っ越してきたらしい。
だが、その生い立ちは俺より悲惨なものだった。
コヨミは生まれた時から孤独だった。
この世に生を受けたとき、捨てられたらしい。
親戚でも厄介者かのようにたらい回しにされ、ようやく行き着いたのが遠い親戚の祖母の元だった。それがこの村だ。

その祖母もつい最近亡くなり、この村の心優しい人達の手によって生活への援助はなんとかなっている。だが本人が極度の人見知りの為なかなか外には出なかったみたいだ。

コヨミと俺は似たもの同士だった。

俺が久しぶりに他人に接したのはコヨミだった。
コヨミが初めて自分から接したのが俺だった。


俺たちの仲が良くなることにそれほど時間は必要としなかった。
次第で二人で良く遊ぶようになり一緒に生活してきたと言っても過言ではない。


俺が優一、心の奥底から信用できる人物、それがコヨミだった。






俺は一人では無くなった。





弱々しかった光が、もう一つの光と重なり、ちょっとだけ大きい光になった−――。


………

「そして凛子ちゃんと瞬平が転校してきて、今か…」
「ん?何か言ったかい、ハルト」
「あ、いや。なんでもない。ただの一人ごとさ」


お茶菓子の用意が出来た為、俺とおっちゃんは休憩室へとそれを持っていく。すると顔が赤くなり過ぎて蒸発しそうになっていたコヨミが俺の目に映った。
「ちょっと凛子ちゃん!コヨミになにしたのっ!!」
「あ~ちょっといじりすぎちゃった…ははっ」


作品名:Wizard//Magica Infinity −3− 作家名:a-o-w