小説インフィニットアンディスカバリー第二部
その声音が胸を温かくするのが感じられると、一瞬、シグムントのふりをしていることも忘れて、カペルは「ありがとうございます」と素直に言ってしまう。
それをわかってかわからずか、女皇は優しげな笑みを返すだけだった。
「それで陛下」
話すタイミングを待っていたのか、カペルと女皇の話が一区切りされたところでユージンが言った。
「その治療法の手がかりを持つ者の情報があるのですが、居所がわからないのです。キリヤという月印の研究者なのですが、ご存じないでしょうか?」
「キリヤ……。ああ、あの子ならば、コバスナ大森林の奥に庵を結び、一人で研究を続けています。国に戻るよう何度も言ったのですが、あれは一途な子ですから」
大切な我が子を語るように女皇は続ける。ユージンさんから聞いていたとおり、国民を我が子のように思う慈悲の女皇、というのは本当らしい。
「最近は連絡も途絶えがちで心配していたところです。ユージン、シグムント、ことのついでに彼の様子も見てきてくれますか?」
「はい」
「では、案内をつけましょう」
そう言って女皇は居並ぶ家臣を見回す。そして、武官の列を見遣ったその目が、そこに並んでいた銀髪の少年の前で止まった。昨日の彼だ。その後ろにはコマチと呼ばれていた少女が立っている。
「トウマ、あなたが案内してあげなさい」
「はっ」
「シグムントと行動をともにすれば、あなたにも学ぶことがありましょう。幼なじみ同士です。手伝いをしておやりなさい」
「はっ、仰せのままに」
「シグムント、仲間の病が治ったあかつきには、また顔を見せてくれますね?」
「は、はい」
「期待しています。ですが、身体だけは労りなさい」
その言葉をもって、スバル女皇との謁見は終了した。
女皇が見せる慈悲の微笑にぺこりとお辞儀をし、にこりと笑ったトウマに笑みを返すと、カペルたちは謁見の間を後にした。
(女皇様って綺麗な人だったね)
(……後でお説教)
アーヤのささやく声にトゲがある。なんとかばれずに済んだと思ったが、それでも及第点はもらえないらしい。
作品名:小説インフィニットアンディスカバリー第二部 作家名:らんぶーたん